善良な医者

時は平安時代





貴族である月彦は、とても病弱であった。原因不明の重い病に侵され、四六時中寝たっきりな生活を送っていた。しかもその病のせいで月彦は20歳まで生きられないと言われていて、現在19歳なのでいつ死んでしまうかも分からない状況だった。
寝たっきりの生活にも、いつ死ぬか分からず怯えるのも、いい加減我慢ならなくなった月彦は毎日善良な医者を呼び出し、薬を作らせていた。

「貴様が出す薬全て全然効かぬではないか!! 善良な医者というのは名だけか!?」
「大変申し訳ございません! 直ぐにまた新しい薬を用意して参ります! 次こそ必ずや月彦様の病を完治させてみせますので!」

何度も聞いた医者の台詞に月彦は我慢の限界だった。
この医者はもう用済みだと判断し、医者が背を向けたその瞬間に怒りに任せ、背後から刃物で頭を突き刺し殺害した。

そして屋敷の者に言いつけ、どの医者よりも優れた医者を探させたのだった。

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