story.22

街へと来たドンキーホーテ一家は、まず初めに食料を確保するために八百屋の店主に声をかけた。

「失礼、食材を買い求めたい」
「おや・・・見ない顔だね」
「はい、この度マリージョアより引越して参りました。ドンキーホーテ・ホーミングと申します」
「「え・・・・・・」」

父が名乗ると、店主の男性だけではなく、周りにいた大勢の人が驚きの声を上げた。その様子にドフラミンゴは眉間に皺を寄せ、辺りを見渡した。天竜人と言ってもひれ伏さない街人へ苛立った。

「ま、マリージョアって・・・!!!」
「あ、あんた・・・て、天竜人かい!!?」
「その肩書きは、もう捨てました。これからは人間です。私は、皆さんと仲良くしたいんです」

父は微笑んでそう言ったが、周りの人は仲良くする気は更々ないのか、後退った。その様子を見て、ドフラミンゴは再び眉間に皺を寄せた。その時、丁度街人がドフラミンゴの前を横切った。無礼極まりない街人に、ドフラミンゴは我慢の限界だった。

「おい!!!」
『ド、ドフィ・・・?』

ドフラミンゴが怒号を上げると、街人達の視線が一気にドフラミンゴに集まった。ドフラミンゴが怒号を続けようと口を開く前に、シルヴィアがそれを止める様に
不安そうにドフラミンゴの服の裾を掴んできた。ドフラミンゴは、自分の服の裾を掴んでいるシルヴィアの手を掴み、やんわりと解いた。

「シルヴィア、いいから黙って見てろえ」
『う、うん・・・』

ドフラミンゴが強く言うと、シルヴィアは不安そうにしながらも頷いた。それを確認して、シルヴィアから一歩離れた。

「おい!!!なぜひれふさねェ!!!きさまら無礼だぞ、おれの前を横切ったな!?だれか銃(ピストル)をもて!!!」
『ド、ドフィ・・・!!』
「おれをだれだと思ってるんだ!!!」

ドフラミンゴがそう言っても、誰一人ひれ伏さなかった。

──なんで、だえ・・・!!?おれは天竜人だぞ!!!

ドフラミンゴは呆然と立ち尽くした。あそこまで言ったのに、何故誰もひれ伏さない。今のドフラミンゴにはその力がないのだろうか・・・。いや、そんなはずはない。天竜人は絶対だ。神の一族なのだ。

『ドフィ、行こう・・・!!』

呆然としてるドフラミンゴを、シルヴィアが腕を引っ張って連れて行った。弟のロシナンテと母と父が歩く先へ、シルヴィアに腕を引かれながらついて行った。









『・・・・・・木が焼ける匂いがする』
「は・・・?」

黙って引っ張られていると、シルヴィアがそう呟くのが聞こえた。どういう事かと聞き返そうとした次の瞬間、シルヴィアはドフラミンゴの腕を離して、どこかへか走り出した。

「おい、シルヴィア!!!どこ行くんだえ!!?」
「シルヴィア!!!」
『ちょっと見てくるね!!』

ドフラミンゴと弟で引き止めようとするが、シルヴィアはそう言って走り去ってしまった。その後ろ姿を、呆然と立ち尽くしながら見ていた。訳も分からず、ただ見ている事しか出来ないでいた。一体何だというんだ。

「心配ね・・・・・・」
「私達もシルヴィアの後を着いて行こう」

母と父の言葉に頷き、ドフラミンゴ達はシルヴィアが向かって行った方向へと、走って向かった。


走っていると、離れた所の前方にシルヴィアの後ろ姿が小さく見えた。何やら呆然と立ち尽くしていた。 一体何があったというんだ。

「シルヴィア!!!どうしたんだえ!!?」
「何があったの!?」
『わ、わたし達の家がっ・・・・・!!!』

ドフラミンゴと母が声をかけると、シルヴィアが青ざめて泣きそうな顔で振り向き、悲鳴の様な声でそう言った。ただならぬシルヴィアの雰囲気に、ドフラミンゴに緊張が走った。

『──燃えてるのっ!!!』

シルヴィアが丁度そう言った時、ドフラミンゴ達がシルヴィアの近くにまで来ていた。
呆然と立ち尽くし、目の前で赤い炎が激しく燃え上がっている、新しいドンキーホーテ家のはずの城を見つめた。


「天竜人はどこだ!!?」

怒号が聞こえそちらに振り向くと、街で見た何人かの街人が、火を持って城の前に立っていた。前に飛び出そうとするが、父に肩を掴んで止められたため、不可能だった。

──父上、何であいつらひれふさないのかえ。

ドフラミンゴに怒りが込み上げてきた。この怒りはひれ伏さない街人にか、それとも・・・・・・。


「探し出せ!!!」
「吊し上げろ!!!」
「逃げたぞ捜せ!!!まだ近くにいるハズだ!!!殺すなよ・・・・・・生かして苦しめろ!!!」
「数百年分の世界の恨みをあの一家に刻み込め!!!」

怒りと憎しみが篭った言葉に、ドフラミンゴ達にゾクッとした恐怖が走る。

「近くにいた白狐一族の生き残りの子供はどうする!!?」

その言葉が聞こえ、思わず逃げようとしたドフラミンゴ達の足が止まってしまった。先日に天竜人達にシルヴィアが生き残っていたと知られたばかりだというのに、もうその話が回っている事に驚いた。

「白狐一族に罪はないからな・・・せめて売りとばすだけにしとこう!!あれだけ見た目が良ければ変態共に高く売れるはずだ!!」

バッとシルヴィアの方へ向くと、シルヴィアは目を見開き恐怖から涙を流して震えていた。

「白狐一族の生き残りってだけでも貴重なのに、あの見た目がありゃ10億はくだらねェはずだ!!!」

その言葉を最後に、シルヴィアの手を掴んでドフラミンゴ達は走り出した。

──父上・・・なぜ追われるのかえ。

絶対に街人達に見つからない所へ隠れなければ。見つかってしまったらドフラミンゴ達はただでは済まないだろうし、シルヴィアが売りとばされてしまう。それだけは何としても避けなければ。シルヴィアはドフラミンゴが守らなければ・・・。

そう思った時、ドフラミンゴの脳裏にはドフラミンゴがシルヴィアを守ると彼女に伝えた時の、安心しきった顔と笑顔が浮かんだ。それを思い出し、シルヴィアの手をぎゅっと強く握った。



TO BE CONTINUED