story.23

ひたすら走って走って走って走りまくって、なるべく遠くに走ってドフラミンゴ達は追ってから逃げていた。
しばらく走って逃げていると、ゴミが沢山落ちている荒地へと辿り着いた。荒地の中心に建っている、崩れかけている建物の中に入った。

「雨露をしのげるだけで、ありがたい・・・・・・」

父がそう言うが、周りは生ゴミや腐った木等の沢山のゴミで溢れているし、虫なども沢山いる。そして臭いがきつすぎて、吐き気が込み上げてくるのだ。とてもじゃないが、ここにずっと留まっているには厳しい場所だ。
見ると、母や弟やシルヴィアも苦しそうだ・・・。父も苦しそうにしながらも、呑気な事を言っているのだ。そんな父に怒りが湧いた。

「こんな汚いところで生きていけるわけないえ!!!家の中に虫が!!家の臭いも吐き気がするえ!!!」

ドフラミンゴがそう言った時、家から少し離れた所に街人達がドフラミンゴ達を探しにこの地域にまで来ている事に気がついた。

「捜し出せ!!あの一家を・・・!!」

その怒号が聞こえ、シルヴィアがビクッと震えた。
そんな彼女を見て思った、もうこの家が嫌でもここに留まるしかないと。
無闇に外に出て別の隠れられる様な場所を探すのも、今は危険だ。いつ街人達に見つかるかわかったものではない。もうこの家にするしかないのだ。



──その日の夜

「──・・・ぁ・・・まり・・・!!」

夜になり、皆が心身共にボロボロになって疲れて寝ている時、ドフラミンゴは話し声が聞こえて目が覚めた。話し声は外の方から聞こえてくる。不思議に思い外を覗くと、電伝虫で通話をしている父の背中が見えた。

「ここまでの事になるとは想定外だった・・・!!私が甘かったんだ・・・!!頼む、何でもする・・・!!!」
「・・・・・・」

父の言葉を聞いて話している相手が、聖地マリージョアにいる天竜人だという事が、理解できた。父はマリージョアにいる天竜人に助けを求めようとしているのだ。

「妻と子供達だけでいい、マリージョアへ帰らせてくれないか・・・・・・・・・このままでは、一家全員殺されてしまうし・・・シルヴィアが売られてしまう!!!」
《キミが選んだ人生だえ、捨てたものは戻らない。白狐一族の子供も自ら望んでキミに着いて行っていた、あの時からもう我々は保護する義務を放棄したんだえ。わかったらもう二度とかけて来るな、人間の分際で》
──ガチャ!!

父の都合の良い助けは受け入れられるはずもなく、天竜人はそう言って通話を切った。

「・・・・・・・・・」

ドフラミンゴは部屋の中に戻り、弟のロシナンテと身を寄せて寝ている、シルヴィアの隣に横になった。その間も、先程の父とマリージョアにいる天竜人の会話を思い出していた。
受け入れてもらえず、マリージョアへ戻れないとなれば、ドフラミンゴ達は天竜人ではなくなったのだ。

そう思ったその時、いつかと同じ様にドフラミンゴが守ると言った時の、シルヴィアの嬉しそうな笑顔と安心しきった顔を思い出し、ハッとした。
あの時はまだ天竜人の力を失ったと自覚していない時だったのだ、その力を失ってしまったと自覚せざるを得なくなってしまった今、ドフラミンゴは・・・・・・

──シルヴィアを、守ってやれない・・・のかえ・・・・・・?

ドフラミンゴは絶望した。
何故、神の力を失ってしまったのだ。守れるだけの力はあったのに、何故・・・・・・今のドフラミンゴは、惚れた女一人守れないのか・・・・・・。いや、必ず守ってみせる。シルヴィアだけは絶対に。
そうドフラミンゴは決意して、再び眠りについた。



──翌日

シルヴィアと母が体調を崩してしまった。昨日はあんな事があったし、この辺の空気はかなり汚れていて環境が悪い、身体に限界が来てしまったのだろう。

ベッドで横になって苦しそうに咳をしているシルヴィアと母が心配になり、ベッドへ近づいて弟と一緒に様子を見た。シルヴィアは高熱を出している様で、顔を真っ赤に染めて苦しそうに眉間に皺を寄せ、荒い息を吐き続けている。母はシルヴィアよりは酷くはなさそうなものの、やはり辛そうなのだ。

「シルヴィア・・・母上・・・」
「辛そうだえ・・・・・・」
「・・・コホッ・・・」
『コホッコホッ・・・ドフィ、ロシー・・・コホコホコホッ!!』

シルヴィアが何かを伝えようとしたが、酷い咳をして聞き取れなかった。

「母上・・・!!シルヴィア・・・!!」
「シルヴィア、無理して話すなえ!!」
『し、心配かけて・・・コホッ・・・ごめんね・・・』

その言葉を聞いて驚いた。心配するのなんて当たり前な事だ。大体、体調崩したのはシルヴィアの所為などではないのだ。苦しんでる母とシルヴィアに何もしてやれない事に、ドフラミンゴは歯痒さを感じた。

「な、なに言ってんだえ!?」

そう聞き返すが、シルヴィアは相当辛いようで、もう話せる状況ではないらしい。シルヴィアと母のために何か出来ないかと考えた時、1つの案が浮かんだ。
それは、街に出て薬を盗む事だ。食糧も確保しないといけないので、それが一番良いだろう。

「街に行って食糧と薬を取ってくるえ」
「「「『!!!?』」」」

ドフラミンゴがそう伝えると、シルヴィア達が驚愕していた。

「ドフィ、危ないぞ!!無茶な事は・・・!!」
「ならこのままシルヴィアと母上をほっとくのかえ!!?何も食べないでうえ死にしていいのかえ!!?おれはどっちも嫌だえ!!」
「だからと言っても、無謀だ・・・!!!」

自分もこのままでは大変だと分かっているくせに、この状況の中でも未だに呑気な事を言う父に腹が立った。
もう相手にしてられないので、ドフラミンゴは食糧と薬を確保するために、引き止めようとする父を振り切って家から飛び出し、街へと向かった。背後では父が何かを叫んでいるのが、ドフラミンゴは振り返らなかった。



TO BE CONTINUED