story.24

ドフラミンゴが薬と食糧を取りに行ってしまい、シルヴィアはこの上ない程に焦っていた。

『ドフィ・・・を、探しに・・・!!』
「まさかその体調で行くと言うのか!?」
『心配・・・なので・・・!!』
「ダメだよシルヴィア・・・っ!!」

上体を起こしてシルヴィアが言うと、ロシナンテがシルヴィアの上体にしがみついて止めてきた。それでも行こうとするシルヴィアを、ロシナンテが必死に引き止めようとしていた。

「シルヴィア・・・ドフィを・・・信じましょ・・・」
「そうだ、シルヴィア!!私もドフィを信じる事にした。あの子は賢い子だ、きっと上手い事やって帰ってくる」

母と父の言葉に、シルヴィアは渋々ながらも頷いた。決してドフラミンゴを信じていない訳ではないが、それでも不安な気持ちは変わらなかった。街人に捕まって酷い事をされていやしないかと、不安でたまらないのだ。
だが、ドフラミンゴを追いかけ様にも、今のシルヴィアでは立つこともままならないし、自由が効かない身体では行った所で街人に捕まってしまうかもしれない。こんな体調じゃなければ、今すぐにでも追いかけていたというのに・・・。

──どうかぶじに帰ってきて・・・!!

シルヴィアはそう切に願う事しかできない自分が、ひどくもどかしく感じた。

「・・・・・・」
『・・・・・・ロシー?伝染る・・・から、離して・・・?』
「っ・・・!!?」

シルヴィアがドフラミンゴを追う事を諦めても尚、ずっとしがみついているロシナンテにシルヴィアが言いずらそうに言うと、ロシナンテは今気づいた様で、顔をほんのり染めてバッと離れた。その様子を、母と父が微笑ましそうに見ていた。

「・・・・・・シルヴィア、すまないね」
『え・・・!!?』

突然謝りだした父を、シルヴィアは訳も分からず驚き怪訝そうに父を見つめた。どうしたと言うのだろうか。

「まだ天竜人の地位を放棄する前に、シルヴィアは言ってくれてただろう?上手くいくかなと・・・」
『あ・・・・・・』

確かにシルヴィアはそう言っていた。それを聞いて父が謝ろうとしている事が理解でき、シルヴィアは首を振った。シルヴィアには、それを攻める権利はないと思ったからだ。

「私を攻めてくれて構わないんだ。上手くいく方向にしか考えなかった私が甘かっんだ・・・世の中そんな上手くいく訳ないと思い知った」
『・・・・・・』
「それなら・・・わたしにも非があるわ・・・」
『え・・・?』

シルヴィアが父になんと言ってあげたらいいか分からず困惑していると、母がそう言った。怪訝に思い母を見ると、母が上体を起こして話し出した。

「わたしは元は天竜人じゃなくて、昔はこの人・・・ホーミングの奴隷だった普通の人間なの・・・」
『え・・・!!?』

その言葉に驚愕した。ロシナンテを見ると、知っているのか別に驚く事はせず、黙って話を聞いていた。

「それでお互い好き合って結婚してから、今までと180度違う天竜人の暮らしにわたしが窮屈に感じちゃったのよ・・・そしたら、見兼ねたホーミングが地位を放棄して普通の人間になって、暮らす事を考えてくれたのよ・・・」
「確かに人間の暮らしを考えたのは最初はお前のためだったが、そのうち私も本気でそう望む様になったから、お前が悪いわけじゃ・・・!!」
「いいえ、わたしの所為よ・・・!!」

シルヴィアは、父と母のどちらに非があるか言い合っているこの状況をどうする事も出来ず、ロシナンテと一緒にオロオロとしながら見ている事しか出来ないでいた。


その時──


「──ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・!!」

家の入口の方から荒い呼吸を繰り返す人物がいるのが聞こえ、もしやと思いそちらの方向へ視線を向けると──

「・・・ハァ・・・ハァ・・・・・・盗って来たえ!!」

少しボロボロになりながらも、五体満足で立っているドフラミンゴがいた。手には茶色い袋を持っていて、その中に盗んだ薬と食糧が入っているのだろう。
その姿を見た瞬間、シルヴィアは安心して涙が出てきた。

『ドフィ・・・っ!!』
「シ、シルヴィア・・・!!!」

シルヴィアは自由が効かない自分の身体を無理矢理動かし、我先にとドフラミンゴへ飛びついた。
すると、受け止めきれなかったドフラミンゴが後ろへと倒れてしまったが、しっかりとシルヴィアを抱き締めてくれた。

『わああんっ!!・・・よ、よかった・・・!!ドフィが・・・無事で、よかったよぉ・・・!!!』
「──・・・シルヴィア・・・」

シルヴィアがドフラミンゴの無事を喜ぶと、ドフラミンゴは優しくシルヴィアの頭を撫でてくれた。それにまた涙の量が増し、わんわんと声を上げながら泣いた。

「ドフィ・・・本当に無事で、よかったわ・・・!!」
「あにうえ・・・すごいえ・・・!!」
「よく無事に帰って来てくれたな・・・!!」

ドンキーホーテ家の皆でドフラミンゴの無事を喜ぶと、ドフラミンゴは誇らしげにしていたのだが、シルヴィアはもう今回の様な無茶を二度としてほしくないと思ったのだ。今回は本当に無事に帰って来てくれたからよかったものの、次今回の様に街に行くとなると、何があるかわからないのだ。もしかしたら見つかってしまうかもしれないと思うだけで、ドフラミンゴの身に何かあったんじゃないかと考えるだけで、心臓が持ちそうにないのだ。
だが、シルヴィアがいくら止めても、優しいドフラミンゴはきっとこれからも、何かあれば街に行ってしまうのだろう。
そう思い、シルヴィアはぎゅっとドフラミンゴに抱き着く力を強めた。


TO BE CONTINUED