story.25

──翌日


「シルヴィア、もう体調は良くなったのかえ?」
『うん!!・・・ありがとうドフィ!!』

本当に体調が大分良くなったのか、顔色が大分良くなった顔でにっこりと可愛らしくシルヴィアに微笑まれた。そんなシルヴィアの微笑みを見てドフラミンゴは思った、昨日は無茶した甲斐があったと。
実は結構危なかったのだ。もう少しで捕まるところだった。
だが、それはシルヴィア達に言うべきではないと、ドフラミンゴはわかっていたので、言わない事にしていた。

そしてドフラミンゴは今日も食糧と、シルヴィアとは違いまだ体調が良くなっていない母のために薬確保のためにと、街に出ようとしていた。

『ドフィ、わたしも行く!!』
「ダメに決まってるえ!!」

体調が良くなったからと言って、シルヴィアを連れてなんて行ける訳もなく、ドフラミンゴは即答で拒否をした。何を言い出すんだと、ドフラミンゴは眉間に皺を寄せキッとシルヴィアを睨んだ。
大体、シルヴィアは捕ってしまったら、売られてしまうのだ。それをシルヴィアはわかっているのだろうか。

『なんで!?』
「シルヴィアは街人に捕まったら売られるんだえ!?」
『っ・・・』

その事を言うと、シルヴィアは息を呑んで黙ってしまった。
ドフラミンゴは思う、シルヴィアはきっとドフラミンゴの手助けをと考えてくれたのだろと。
だが、ドフラミンゴはシルヴィアに何かあったらと不安だったのだ。神の力を失ってしまった今、悲しい事にシルヴィアを絶対守れるという自信は無くなってしまっていたのだ。だからシルヴィアには少しでも安全な家に、父と母といてほしかった。

「シルヴィア、いいからここにいるんだえ」
『でも、わたし心配で・・・・・・!!』
「絶対またここに帰ってくるから、信じて待ってるんだえ」
『・・・、・・・わかった・・・』

ドフラミンゴがそう言うと、シルヴィアは渋々といっ感じで頷いた。
だが、完全には納得していないのだろう。顔は悲しみに染まっていて、瞳は涙で潤んでゆらゆらと揺れていた。そんな顔をさせてしまった事に罪悪感を感じたが、ドフラミンゴはこればっかりは譲れなかった。シルヴィアの事は大切だから、守りたいから、危険な目に合わせたくなった。

「ドフィ、無茶はしないでね・・・?」
「わかってるえ、母上」

母が心配そうに聞いてきた言葉に、ドフラミンゴは頷いた。

「ロシー、お前はおれと一緒に行くえ」
「わかったえ」

ロシナンテが頷いたのを確認し、ドフラミンゴとロシナンテは家から出て街へと向かった。




「おい!!天竜人のガキ共がいたぞ!!」
「捕まえろ!!!」
「パンを盗まれた!!」

街に来たドフラミンゴと弟だったが、食糧を盗った時に運が悪く街人に見つかってしまった。

「ロシー、逃げるえ!!!」

盗った食糧を抱えて必死に追手から逃げたが、途中で弟が転けてしまった。

「ロシー!!!」
「あに・・・うえ!!」

置いて行ける訳もなく、ドフラミンゴは引き返して弟の元へ駆け寄った。

「──捕まえたぞ!!!」

その時、追いついた街人に捕まってしまった。ドフラミンゴと弟の周りを街人が囲んでいる。
ドフラミンゴは悔しい気持ちでいっぱいになりながらも、恐怖で震えている大事な弟を守るために、庇うように抱きしめた。

「離れろ!!この・・・パン泥棒め!!」
──バキッ!!
「ぐっ・・・!!」
「あに・・・うえっ!!!」

棒を持った街人に殴られ、衝動で吹き飛ばされてしまい、庇っていた弟と離されてしまった。
すると、街人達の弟とドフラミンゴへの暴行が始まった。

──父上・・・・・・生まれて初めて・・・痛いえ・・・!!!

笑いながら暴行を加えてくる街人達から、頭を守るように抱えて体を丸め、痛みに泣きそうになりながらも涙を堪え、ひたすら痛みに耐えていた。ここで泣いたら負けだと思ったからだ。
そして、ドフラミンゴはこうなる原因となった父へ、段々と憎しみを抱く様になっていた。まだ完全ではないものの、着々と憎しみの思いは増していく。

──こんな奴ら・・・力さえあれば・・・!!!

どうする事も出来ず、ドフラミンゴは悔しさのあまりギリッと歯軋りをした。今はただ暴行が止むまで耐えるしかないのだ。


「──こいつらあんまり悲鳴上げねェからつまんねェな・・・!!」
「もう行こうぜ」
「良いストレス発散になったな」

やっと街人達からの暴行が止み、そう吐き捨てて街人達は笑いながら去っていった。その頃には、ドフラミンゴと弟はもうボロボロになっていた。

──生まれて初めて、ハラが減ったえ・・・!!

街人達が去って安心した時、次には激しい空腹が襲ってきた。今までお腹が減る前には、食事を取っていたので感じた事はなかったが、生まれて初めて味わう空腹は、とても耐え難いものだった。

ドフラミンゴは激しい空腹と痛みにふらふらしながら立ち上がり、泣いている弟の元へ近づいた。

「ロシー、下々民にやられて泣くなえ!!」
「あに・・・うえ・・・っ!!ううっ・・・!!だって・・・!!」
「だってじゃねェ!!泣いたら負けだ!!泣き虫はシルヴィアだけで十分だ!!」

ドフラミンゴが怒鳴る様にそう言うと、弟は涙を拭いまだ溢れそうな涙を耐えながら、ふらふらと立ち上がった。

「・・・今日はもう街には行けない・・・帰るえ」
「けどあにうえ・・・食べ物・・・」
「おれが持ってるパンをおれとロシーで半分こして、お前が持ってるパンをシルヴィア達に渡すんだえ」

ドフラミンゴがそう言うと、弟は無言で頷いた。

弟が持っているパンは3口しか食べていないため、4分の3位残っていた。そのパンを家で待っている家族に分けるのだ。
そしてドフラミンゴが持っているパンは、半分まで食べてしまっていて4分の2位になっている。そのパンを弟とドフラミンゴの2人で分けて食べるのだ。

ドフラミンゴは自分が持っているパンを半分こし弟に渡して、4分の1位になったパンに食らいついた。



『ドフィ・・・!!!ロシー・・・!!!』

帰ると、やはりと言うべきか、シルヴィアが泣きながらドフラミンゴと弟に真っ先に駆け寄って来て、所々血で滲んでボロボロな状態の弟とドフラミンゴの身を案じて、しばらく泣き続けていた。



TO BE CONTINUED