story.27

弟のロシナンテがシルヴィアに甘えられてるのを見て、ドフラミンゴは面白くない思いで眉間に皺を寄せ、サングラスの中から弟を睨みつけた。

──シルヴィアが甘えるのはおれだけでいいんだえ・・・!!

大体、弟は前に風呂場でシルヴィアの白狐の姿を見て、怖がっていたんじゃなかったのか。それが今や全然感じられないのだ。どういう事だと、面白くない気持ち半分、怪訝に思う半分で弟を見ていた。

だが、その時シルヴィアが突然弟から離れた。その事に、弟が名残惜しそうにしていたが、ドフラミンゴはよかったと安心した。もう少し遅かったら、ドフラミンゴは2人を黙って見ていられず、無理矢理引き離す所だったのだ。

そして弟から離れたシルヴィアはというと、母と父の様子が気になっている様子だ。
すると父と母は我に返り、驚きの声を上げた。

「驚いた・・・!!随分大きくなったな・・・!!」
「ほんとね・・・!!」

そう言っている父と母は純粋に驚いているだけの様で、シルヴィアは安心してほっと溜息を吐いていた。

『これでもまだ小さいんだよ・・・わたしがまだ子供だから小さいだけで、本当は5mあるの』
「ご、5m・・・!!?」

その言葉に驚いた。今でも大きいというのに、更に大きくなるのか。

『でも、これだけあればみんなを温めてあげられる!・・・みんなわたしのお腹に頭を乗せて横になって』

シルヴィアはそう嬉しそうに言い、横になった。言われた通りに横になると、シルヴィアの十本ある白いふさふさの尻尾を、まるで布団代わりであるかのように、ドフラミンゴ達の身体を覆った。

「温かいわね・・・!!」
「これでぐっすり眠れそうだ・・・」
「ぽかぽかだえ・・・」
「シルヴィア、ありがとう」

ドフラミンゴ達が嬉しそうな声を上げると、シルヴィアがよかったと言って嬉しそうにしていた。その様子を見て、ドフラミンゴは自分まで嬉しくなって、シルヴィアのふさふさの尻尾を優しく撫でた。シルヴィアが嬉しいと、ドフラミンゴまで嬉しくなったのだ。

「シルヴィア、よかったな」

ドフラミンゴが優しくそう声を掛けると、シルヴィアは本当に嬉しそうにうん!!、と頷いていた。

ドフラミンゴはこんな最悪で辛い日々の中でも、シルヴィアがいてくれたら、それだけでその時だけは幸せを感じられたのだ。

やがて、シルヴィアの暖かい温もりでうとうとしてきたドフラミンゴ達は、気づいたらぐっすりと眠っていたのだった──・・・









──翌日


ドフラミンゴと弟のロシナンテは、今日も食糧を探しに来ていた。
そして、ドフラミンゴと弟は、見つけた食べ物を食している最中だった。
だが、その食べている物に問題があった。その食べている物とは、袋の中に詰まっていた生ゴミとして捨てられていた、腐りかけていた魚やらパンやらであった。
それでも、少しでも空腹を満たすためには食べるしかなかったのだ。

「早く食えロシー!!人が来る!!オエッオ〜エッ」

ガツガツと勢い良く口に含んで言うが、やはり腐りかけの食べ物はあまり食べられた物ではなく、腐った時特有の臭いと味で嘔吐してしまった。
だが、それでも無理矢理胃の中に流し込んだ。

ある程度食べた後、袋の中を漁ってなるべく新鮮な果物やらパンやら魚やらを探し出し、側にあった籠になるべく沢山詰めた。

「ロシー帰るえ!!」

無言で頷いた弟と一緒に、籠に詰めた食べ物を持って家へと急いだ。この籠に詰めた食べ物をシルヴィア達に持って行き、食べさせるためだ。




家に着くと、母がベッドで横になって酷い咳をしていたのが目に入った。その側にはシルヴィアと父が母に寄り添い、心配そうにしていた。

シルヴィアは、あの体調を崩した日にドフラミンゴが取って来た薬を飲んで治った日以来、すっかり元気を取り戻しているが、シルヴィアとは対照的に母は一向に治る気配がなく、日に日に悪化している。

「母上っ!!食べ物だえ!!」
「これ食べて元気になるえ!!」
『わあっ!!2人とも凄いね!!いっぱい見つけたね〜っ!!』

ドフラミンゴと弟が持ってきた沢山の食べ物を見せ、そう言った。その沢山の食べ物を見て、シルヴィアが嬉しそうな声を上げた。そんなシルヴィアを見て、ドフラミンゴも嬉しくそして誇らしく思った。

「シルヴィアも食べるえ!!」
『ありがとう!!』

ドフラミンゴがリンゴをシルヴィアに差し出すと、にっこりと可愛らしい笑顔を浮かべて嬉しそうに受け取ってくれた。このシルヴィアの笑顔が見れるだけで、ドフラミンゴは今日も頑張った甲斐があったと思えるのだ。

「ははうえも!!」
「ごめんね・・・ドフィ・・・ロシー・・・コホコホッ」
「「母上っ!!」」
『お母様・・・っ』

苦しそうな咳をする母に、ドフラミンゴと弟は思わず持っていた食べ物を落とし、母に駆け寄った。

「今日は・・・何も入りそうにないから・・・コホコホッ・・・み、んなで・・・食べて・・・コホコホッ」
「わ、わかったえ・・・」
『お母様・・・・・・』

本当に苦しそうな母に、無理に食べさせるのも酷なので、ドフラミンゴ達は素直に頷いた。その後、ドフラミンゴ達はずっと母が心配で側に寄り添っていた。





そして、その日の夜に悲劇は突然起きた・・・・・・母が命を落としたのだ──・・・

「ははうえ・・・っ!!」
『お母様・・・ッ!!うわああんっ!!』

弟とシルヴィアが、ベッドの上で顔に白い布を被って命を落とした母の胸元で、大声を上げて泣いている。

──父上・・・・・・・・・母上は死んだえ・・・・・・・・・

ドフラミンゴは、命を落とした母を見てこの世の終わりのような顔をしている父を、睨みつけた。ドフラミンゴの父への憎しみの思いは、母が死んだ事により一気に増した。



TO BE CONTINUED