story.30

「っ・・・!!」

ドフラミンゴが目を覚ますと、視界が真っ黒だという事に気がついた。

──なん・・・だ!!?

ならばと手を動かそうとしてみるが、拘束されてるのか自由が効かなかった。足はなんとか動かせるが、地面に着いている感覚がなく、高い所に吊し上げられている様だ。

「天竜人の一家だァ〜〜〜!!!」

そんな声が聞こえ、ドフラミンゴ達は街人達に捕えられたという事が理解出来た。

「元天竜人だ、殺しても海軍は動かねェ!!」
「ありがてェ、報復の機会を与えられた!!!一生泣き寝入りと諦めてた・・・!!!」
「ハンマーで全身の骨を折ろう!!」
「千本の矢を刺そう!!」
「殺すな・・・・・・!!ずっと、生かして苦しめろ!!!」

そんな憎しみの篭った声が次々と聞こえた。

「まだ5歳と2歳だったおれの息子達が・・・!!天竜人の前を横切ったって理由で、銃で16発!!即死だった!!!」
「奴隷にされた娘が憐れな姿で帰って来て・・・・・・!!一言も喋らずに・・・・・・3日後に自害したわ!!!」
「おれは昔奴隷だった!!!両目を遊びで奪われた・・・!!!」
「妻が焼き殺された・・・!!どうでもいいんだろお前らにゃ」

ドフラミンゴは、それが当然だと思っていた。天竜人は神の一族だ、それが出来て当たり前なのだ。今ドフラミンゴにその力があったのなら、今すぐドフラミンゴをこんな目にあわせた街人達を殺してやれるというのに。
それが出来ず、ドフラミンゴは悔しくて屈辱で歯を食いしばった。

「お前らに納める"天上金"のせいで・・・!!国が飢餓で滅んだんだ・・・・・・・・・!!!お前ら腹減った事あるか!?」
「みんな骨と皮になって死んだんだよ!!!」

空腹ならバカな父が地位を放棄し、こんな所に2年前に来てしまった所為で、生まれて初めて味わったとも。その所為でこのドフラミンゴが、ここ2年間の間は空腹を満たす為に生まれて初めて生ゴミを食べるという、屈辱を味わっているのだ。

「神も同然なんだろ!?人間とは違うんだろ!!?これくらいじゃ・・・死なねェよなァ!!!」
──ドスッ!!!
「ギャアアア〜〜〜!!!」
「ドフィ!!」
「兄上!!」

突然、腕の方に刃物で突き刺された様なとてつもない痛みが襲い、ドフラミンゴは悲鳴を上げた。目からは痛みのあまり涙が溢れ、つーと頬を涙が伝った。

──くそうくそうくそう!!!てめェらふざけるな!!!おれを誰だと思っていやがる!!!お前らなんて何の価値もねェくせに!!!おれをこんな目にあわせやがって!!!

ドフラミンゴはふつふつと、腹の底から怒りの感情が憤怒となって湧いてきた。

「人間を虫けら以下に扱いやがって・・・!!苦しいって!!悲しいって!!辛いって!!何だか知ってるか!!?おい!!天竜人ォ〜〜〜!!!」

そう泣き叫ぶ声が聞こえ、弓を引く音が聞こえた時、ドフラミンゴは憤怒が爆発した。

「おれは!!!おれをこんな目にあわせたてめェらを絶対許さねェ!!!いつか必ず・・・てめェらを殺しに来るからなァ!!!」

そうドフラミンゴが憎しみを込めて叫んだ時、ドフラミンゴは自分の体から何やら温かい気がぶわん、と放たれたのを感じた。その次の瞬間、ドタドタと何かが倒れて行く様な音が聞こえるが、視界が奪われているので何も見えない。

「し、信じられん・・・!!!人が気絶してる・・・!!!」

父がそう驚いた声を上げ、その言葉にドフラミンゴが驚いた。

──なん、だと・・・!!?どういうことだ・・・!!?

訳もわけらず、ドフラミンゴは呆然とした。

「ドフィ・・・!!何をしたんだ!!?お前が叫んだ瞬間、人が次々と倒れて気絶していった・・・!!!」
「知らねェよ!!!」

ドフラミンゴ自身が一番驚いているのだ。何だと聞かれても説明出来るはずもなかった。
考えられるのは、先程感じた何やら暖かい気がぶわんと放たれた瞬間だが、あれが何なのかはドフラミンゴも知らなかった。

「・・・だ、だが今がチャンスだ!!今助けるからなドフィとロシー!!」

そう父が言った後、少し経った後に弟とドフラミンゴは父によって救出された。









あの後、流石にもう今の家に帰れる訳もないので、家を引っ越す事になったのだが、ドフラミンゴは父と顔を合わすのはなるべく避けたいので、外に出ていた。

その時、ドフラミンゴは4人の男と出会ったのだ。名をヴェルゴ、ディアマンテ、トレーボル、ピーカとそれぞれ名乗っていた。
そして、ドフラミンゴはその4人に自分が天竜人という事から、この2年間の間にあった事と、先程街人達に捕まって酷い目に合っていてその街人達が突然気絶したという事まで、全てを話したのだ。

「みんな気を失ったって?それは覇気だ!!んね〜〜!!"覇王色"の覇気!!」
「?」

トレーボルにそう言われても、その覇王色の覇気とは何か知っている訳もなく、ドフラミンゴは眉間に皺を寄せ、頭上に?を浮かべた。

「──それは"王の資質"を持つ証!!・・・ドフラミンゴ・・・お前は天に選ばれた男なんだ!!!」
「!!?」
「──男なら自分を試すがいい、殺したい奴はいるか?復讐する力を与えようか」

そう言って、トレーボルは机の上に拳銃と、渦巻き模様が全体にある梨の様な形をした変な木の実を並べた。それを見て、ドフラミンゴは迷いなく答えた。

「殺したい奴・・・!?山程いる・・・!!!」

まず初めに全ての元凶である父と、シルヴィアを連れ去った男達と買い取ったであろう男、そしてこの北の果てにいる全ての街人達だ。

ドフラミンゴの復讐劇は、今幕が上がった──・・・


TO BE CONTINUED