story.32

「ドフィ、こんな所にいたのか・・・!!心配したぞ!!」
「・・・・・・・・・」

トレーボルから力を受け取ったドフラミンゴは、父を殺すために新しい家にいるであろう父の元へと向かっていたのだが、まさかの父の方からドフラミンゴの元へと来たのだ。

──バカな奴め・・・自分から来やがった!!これから自分が殺されるとも知らずに・・・!!

ドフラミンゴは、自分を見つけて安心仕切った顔をしている父を、心の中で嘲笑った。
そしてドフラミンゴが父に拳銃を突き付けると、父の顔が安心仕切った顔から恐怖に変えて引き攣っていた。

──惨めな男だ・・・こいつの所為で母上は死に、シルヴィアが連れ去られたんだ・・・!!!

ドフラミンゴが自分でも驚くくらい躊躇いもなく、父に銃口を合わせて拳銃の引き金を引こうとしたその時──



「兄上やめてーー!!兄上ーー!!」

弟のロシナンテが泣き叫びながら駆け寄って来た事により、ドフラミンゴの引き金を引く手が止まり、合わせていた銃口がずれた。

「ロ、ロシナンテっ・・・!!」

駆け寄って来た弟を見たとた途端、父は先程まで恐怖に染まっていた顔から、急に父親らしい顔付きになり、弟を守る様に腕で抱き締め、ドフラミンゴに背を向けていた。
すると、弟が父の腕から抜け出そうともがいていたが、父は決して弟を腕の中から解放する事はなかった。

「なぜおれの力まで奪った!!!もう取り返しはつかねェんだぞ!!!」
「!!」

そして再び父に銃口を合わせ、引き金を引こうとした時──


「兄上やめてーっ!!こんな事、母上もシルヴィアも望んでないよっ!!」
「っ・・・!!」

再びドフラミンゴの引き金を引く手が、弟の言葉によって止められた。
だが、そんな事を言われてしまっても、もう引き返せない所まで来てしまっているのだ。

「もう引き返せねェんだよ!!!──これはシルヴィアのためでもある!!!」
「っ・・・!!?」

そう、そもそもはシルヴィアの為でもあるのだ。ドフラミンゴは父を殺した後、父の首を持ってマリージョアへと帰り、再び天竜人の力を手に入れ、その後に買い取られたであろう男からシルヴィアを取り戻し、マリージョアで一生誰にもシルヴィアに触れさせない様に守るつもりなのだ。

「おれはお前の首で・・・・・・!!聖地へ戻ってシルヴィアを取り戻す!!!」

あの時は守れなかったから、今度こそは何があっても絶対に守れる環境で、シルヴィアの側にいたかったのだ。その為には、父の犠牲が必要だったのだ。それはシルヴィアの為でもあり、ドフラミンゴの為でもあり、弟のためでもあった。ドフラミンゴが天竜人に戻れば、自分と繋がりのある弟は必然的に天竜人に戻れ、この最悪な生活から抜け出す事が出来るのだ。

ドフラミンゴがそう思った時、父は目の端に涙を浮かべながら悲しそうに微笑み──

「ドフラミンゴ・・・ロシナンテ・・・私が父親で、ごめんな」

そう言ったのだ。その言葉には死への覚悟を感じられ、ドフラミンゴはもう弟が泣き叫ぼうが関係なく、これから歩むシルヴィアとドフラミンゴ、そして弟のロシナンテとの新しい人生のために、引き金を引いた。

──ドォン!!!

「うわあああああん!!!」
「・・・・・・・・・」

弾が命中し、父は血を流してその場に力なく倒れた。それを確認し、ドフラミンゴはその場にへたり込んだ。
それと同時に、弟は泣き叫びながらどこかへか走って行ってしまったが、今のドフラミンゴは追いかけれる気力がなかった。
今ドフラミンゴは、命が絶えて地面に血の海を流しながら倒れ込んだ父を、呆然として見つめながら、人間の生命の呆気なさを実感していたのだ。生きるのはこんなにも大変なのに、死とはこんなにも呆気ないものなのだ。それを実感し、ドフラミンゴは目の端から悲しみの涙を流した。

こんな結果になってしまったが、ドフラミンゴは決して父を愛していない訳ではなかった。聖地マリージョアにいた頃は、いつも父の背中を追いかけていたのだ。
憧れていた。尊敬していた。大好きだった。今より幼い頃大事そうに宝物の様に腕に抱かれて照れくさかったが、嬉しかった。もう父の腕に抱かれないと思うと、ドフラミンゴは悲しく思った。ドフラミンゴは、確かに父の事を愛していたのだ。

だが、ドフラミンゴはこの結果になってしまった事に後悔はしてなかった。
ドフラミンゴは1度目を閉じ、シルヴィアの桜が満開に咲いたかの様な可憐な笑顔を思い出し、目を開いた。その時のドフラミンゴには、もう先程までの悲しみも消えていた。
今ドフラミンゴは、ただ父の首を持ってマリージョアへ向い、愛するシルヴィアの事を助け出す事だけを考えて、真っ直ぐ前を見つめていた──・・・









あれからドフラミンゴは父の首を持ち、トレーボル達4人に先程までの事を知らせるために、合流していた。

「べへへへ〜〜〜!!それが父親の首か!!」
「あァ、そうだ。この首を今から聖地マリージョアへ持って行く」
「おれ達はどうすればいいんだ・・・?」
「お前らはおれの弟を探してくれ、唯一残ったおれの肉親なんだ。あいつも天竜人に戻す」

ドフラミンゴがそう言うと、トレーボル達はわかっと頷いてくれたので、ドフラミンゴは弟の特徴を話し、探しに行かせた。

そして、ドフラミンゴは父の首を持ってマリージョアへ向かう為に歩き出したのだが、この時ドフラミンゴは知らなかったのだ・・・もう二度と天竜人へ戻れる事はないという事を──・・・



TO BE CONTINUED