story.41

 シルヴィアが一緒に来ると言ってくれてよかった。まあ、例え来ないと言ってたとしても、ドフラミンゴはシルヴィアを連れて行かないという選択肢はないので、無理矢理にでも連れて行くつもりだったのだが。
 ドフラミンゴは、自分の胸に顔を埋めて泣いているシルヴィアの背中を、あやす様に撫でながらそう思った。

『天竜人には戻れたの・・・?』

 だが、シルヴィアのこの一言により、ドフラミンゴのシルヴィアの背中を撫でている手は止まった。そして、何て言うべきか迷った。復讐するのが1番の目的だったが、天竜人に戻るためでもあって父を殺したのに、そこまでして天竜人に戻れなかったと言ったら、シルヴィアは何て言うだろうか・・・。

『ドフィ・・・?』

 答えに迷っていると、シルヴィアが怪訝そうに見てきた。
ここで嘘を付いたとしても、バレるのは時間の問題だろう。ならば、ここは素直に言うべきか・・・。

「・・・・・・いや、あいつらはおれも裏切り者として扱いやがったから、受け入れなかった」
『っ・・・そっか・・・』

 ドフラミンゴが言うと、シルヴィアは顔を悲痛そうに歪めた。ドフラミンゴが、先程思った死んだ父の事で悲しんでいるのだと、察しがついた。だが、シルヴィアは頷いただけで、それ以上何も言うことはなかった。
 もういっその事、ドフラミンゴが誓った事を言ってしまおうか。ドフラミンゴがこれからしようとしてる事を。

「べへへ〜!! だからドフィはこの世界の王になるんだ!!」
『え・・・?』
「・・・・・・・・・」

 今まで黙っていたため、半分空気になっていたトレーボルが言った。だが、ドフラミンゴが言おうか迷っていた事をさらっと言われ、何だか腹が立った。

『ど、どうゆうこと・・・?』

 シルヴィアが、ドフラミンゴに説明を求める様な視線を向けて来た。そんなシルヴィアを見てドフラミンゴは1つ溜息を吐き、説明をする事にした。

「おれは許せなかった、初めからおれは望んでた訳じゃなかったのに、裏切り者として扱いやがったあいつらが・・・」
『・・・・・・』
「だからおれはその時誓ったんだ、天竜人が牛耳るこの世界を全て破壊してやるとな。そして、おれがこの世界の王になるんだ」
『っ・・・』

 ドフラミンゴが言い切ると、シルヴィアが息を呑んだのがわかった。

「トレーボル達4人はそれに協力してくれる仲間だ」
『そ、うなんだ・・・』
「だがシルヴィア、お前はただおれの側にいてくれるだけでいい」
「「「「!!?」」」」
『え・・・!?』

 ドフラミンゴがそう言うと、シルヴィアだけでなく、トレーボル達まで驚いていた。おそらくトレーボル達は、シルヴィアにも力を使わせるのだと思っていたのだろう。だが、ドフラミンゴはそんな事をシルヴィアにさせる訳ないのだ。

「おれは、お前を危険な目に遭わせるつもりは毛頭ないからな」
『やだっ!!』
「「「「!!?」」」」
「は・・・」

 今度はドフラミンゴが驚いた。シルヴィアは今、嫌だと言わなかったか・・・?
あまりの予想外の言葉に、ぽかんと口が開いた。背後では、トレーボル達も驚いてるのを感じた。

『どうせ、止めたって無駄なんでしょ・・・?』
「・・・あァ」
『ならわたしはもう、ただ待ってるだけはもう嫌なのっ!! ドフィが戦うなら、わたしも戦う!! 強くなってドフィや皆を守りたい!!』
「・・・シルヴィア・・・」
『もうこれ以上、大事な人を失いたくないのっ・・・!!』
「・・・・・・」

 シルヴィアが悲痛そうに顔を歪め、悲鳴の様な声で言った。そこまで言われてしまったらもう、ただ側に居ろとは言えなくなってしまった。
 だが、シルヴィアには悪いが、ドフラミンゴはシルヴィアに守られる気は毛頭なかった。男が女に、それも惚れた女に守られるなんて言語道断だ。

「姫さんは中々立派じゃねェか」
「さすがだな」
「べっへっへっへ〜〜!! 鼻水出たわ!! ドフィが見込んだだけはある!!」
「ここまで言われてしまったら、協力してもらうしかないな」

 後ろの4人が、そう満足気に言ったのが聞こえてきた。

『あの・・・ディアマンテさん・・・?』
「ん? どうした姫さん?」
『さっきは怖がってしまってごめんなさい!!』

 シルヴィアが恐る恐るといった感じでディアマンテに近づき、謝っていた。それはおそらく、最初に目が覚めた時の事を言っているのだろう。シルヴィアを抱き上げていたディアマンテの腕の中で、暴れていた時の光景を思い出した。

「あァ、なんだそんな事か! いきなり、知らない奴の腕の中にいたら、怖がるのは当然だ。それも連れ去られた後だったら尚更な。だから気にしなくていい」
『・・・ありがとう』
「「「「!!」」」」

 ディアマンテが言うと、シルヴィアが微笑んだ。すると、その微笑みにディアマンテだけでなく、他の3人まで驚いてほんのりと頬を染めている。
・・・気持ちはわかるが、止めてほしい。見た目のインパクトが強い奴らが頬を染めるのは、似合ってない。ヴェルゴが1番マシだ。

『ドフィ、ロシーの事はどうするの・・・?』

 相変わらずと言うべきか、シルヴィアは自分の微笑みで4人が頬を染めてる事に気づいていない様で、不安そうにドフラミンゴに聞いてきた。

「ロシーは必ず見つける・・・大事な弟だからな」
『そ、そうだよね!! よかった・・・っ!!』

 ドフラミンゴが言うと、シルヴィアはほっと息を吐いて安心していた。
言った事は本当だが、何だか面白くなかった。やはりシルヴィアには、ドフラミンゴの事だけを考えてほしいのだ。
 だが、それを言った所で、優しいシルヴィアには無駄だとわかっているので、心の中で思うだけに留めておいた。


TO BE CONTINUED