好きすぎて俺、バカみたいだ
「銀ちゃん!外で遊んでくるネ!」
「おー、気ィつけて行って来いよ〜」

 番傘を持ってニコニコと楽しそうに満面の笑顔を浮かべて言った神楽に、銀時はソファで寝転びテレビの画面を見つめながら、手をぶらぶらと振って返事を返した。
 すると、神楽は元気に頷き、定春を連れて出て行った。新八も姉の方に行ってるので、現在この家には銀時と、あともう1人のみになっていた。

『もう、銀ちゃんったら!ちょっとだらだらしすぎよ!』

 そう、もう1人とはこの子である。銀時のマイスウィートエンジェルの花梨ちゃんだ。花梨は万事屋、いや銀時のオアシス的存在である。
そんな花梨は、銀時のだらけ切った姿を見て可愛らしく頬をぷっくりと膨らませて咎めてきた。

「でもよ花梨、今日は依頼もねェしなァ・・・やる事と言ったら、ジャンプ読むかテレビ見るしか、やる事がねェんだもん!」
『男がもんとか言わない!!』
「え〜?でも今の可愛くね!?銀さん可愛かったんじゃねこれ!?」

 ニヤニヤと笑ってそう言うと、花梨の顔が歪んだ。あ、これは面倒臭いと思ってる顔だと瞬時に理解できた。目線もどことなく冷たい。

『はいはい、可愛かった可愛かったよ〜』
「ちょっとちょっと花梨ちゃん!?冗談だからね!?そんな冷たい目で見ちゃ嫌ァァ!!」

 半端ない棒読みと、冷たい目で見られ、好きな子にそんな仕打ちをされたらたまったもんじゃないと、銀時は花梨に飛びつき、いやいやと首を振った。



『冗談だよ!!銀ちゃんは可愛いしかっこいいよ!!』
「っ!!?」

 くすくすと笑ってさらりと言われた言葉に、銀時は自分の鼓動が早くなるのを感じた。いつもは恥ずかしがってそういう事を言わないのに。しかも、その笑顔が可愛すぎだのなんのって・・・。それは──

「ふ、不意打ちだろォォ!?」

思わず思った事が口から出てしまった。
 すると、銀時の言ってる事の意味か理解出来なかったのか、花梨がきょとんとした顔で首を傾げている。頭上には?がいくつも飛んでいる。

──くそう!!そんな顔も可愛いなコンチキショー!!

花梨は銀時を殺すつもりじゃないだろうか。絶対そうに違いない。心臓がキュンキュンと痛いくらいに鳴っていて、もちそうにない。死因は"キュン死に"だ間違いない。糖尿病よりこっちの方が厄介だ。

『銀ちゃん・・・?』

 銀時が悶えていると、目の前の花梨は益々怪訝そうに首を傾げていた。そんな花梨を、銀時は引き寄せて正面から抱き締め、胸に自分の顔を埋めた。細身の割には意外と大きい花梨の胸は、銀時の顔を柔らかく包み込んでくれた。そんな花梨のマシュマロの様な胸にすりすりと顔を擦り寄せ、存分に堪能した。

「なあ、花梨」
『ふふっ、なーに?銀ちゃん』

 銀時がマシュマロの様な胸を堪能しながら声を掛けると、銀時の頭を優しく撫でながら返事を返してくれた。
 そんな花梨にまたキュンキュンしながら、銀時は胸に埋めていた顔を上げ、花梨の顔を至近距離で見上げた。

「花梨、好きだ」
『っ!!も、もう!!急にどうしたの!?』

 銀時の言葉を聞いた花梨は、顔を真っ赤に染めて、照れくさいのかぷいっと銀時から顔を逸らした。そんな花梨も可愛くて仕方なく、顔がニヤけてしまう。

「なになに〜?花梨ちゃんは照れてるんですか〜?」
『し、知らないっ!!』
「なーなー、花梨は?花梨は銀さんの事好き?」
『そ、そんなこと、言えるわけないでしょっ!!』

 ああ、可愛くて仕方ない。どうしてくれようかこの子。本当に可愛いなコンチキショー。ニヤニヤが止まらない。

「え〜?そんな事言わずに言ってよ〜!!銀さん、花梨から1度も好きって言ってもらってないけど〜?」
『っ・・・す・・・!!』
「す・・・?」

 今日もきっとすの後にベタなすき焼きとか言って、言ってくれないんだろうなとか思いつつ、ニヤニヤとしながら先の言葉を待った。

『・・・・・・・・・!!』
「っ・・・!!?」

 確かに好きと聞こえた。凄い小さな声で、耳を済ませないとわからなかった位、小さな声で好きと言っていた。
 またしても不意打ちを食らい、目の前の花梨に負けないくらい銀時の顔は真っ赤に染まっている事だろう。

「ま、ままままぢかよ!!」
『っ・・・』

 まさか言ってくれるとは思わなかった。花梨と付き合って2年は経つが、今まで花梨から好きと言ってもらった事がなかったのだ。これはもう、完全に不意打ちだ。胸にズッキューンときた。今なら悔いなく死ねそう。

 てかもう、"好きすぎて俺、バカみたいだ"。


─END─

銀さんが彼女の事が好きすぎてしょうがないって感じの小説が書きたくてこうなりました!!ここまで読んでくれた方、ありがとうございました