後悔先に立たず


私ね、高校の時ずっと次郎せんせー......退職しちゃった化学の先生に片想いしててさ、学校で見かける度に話しかけて他の授業なんて真面目に聞かないのに次郎せんせーの授業だけテスト頑張って、次郎せんせーも多分何となく察してたんだけど、大人だから特別扱いも、勘違いさせるような言葉も態度もなくって。
次郎せんせーが学校辞めるって話聞いた時さ、我慢できなくて直接言葉で初めて好きですって伝えて、それでもやっぱり次郎せんせーは私みたいな子供のことなんて好きじゃなくて傷付けないように断ってくれて。
「もっといい人がいるよ」なんて言って、まぁ私その時せんせー以外見つかんねえっつうのとか思ってたんだけど。
でもやっぱ次郎せんせーに迷惑かけたくないからそうですね、ごめんなさいなんて言ってさ。

それから私は卒業、次郎せんせー退職して、会うこともなくなったんだけど、ふと友達が「そう言えば学校辞めてアイドルになった先生いたじゃん?」なんて言うから次郎せんせーアイドルになったんだって思って。
いや、あの時は色々ショックで次郎せんせーがせんせーやめた後どうすんのかとか頭に入ってこなかったのよ。
んでその日、家に帰って検索して曲聴いてさ。
ずっと好きだった声が歌ってて次の日思わずCDなんて買っちゃって、ネットで調べたらライブとかやってるから勢いのままチケットも取ってさ。正直当たるなんて思ってなかったのにちゃんと当選しちゃって。
てか数学の先生と英語の先生と3人でアイドルになってたの。めっちゃ笑ったよね。

まぁ当日行ってみたら案の定、近い席なんてそう当たるはずも無くてさ......表情なんてわからないくらいの距離だったの。
なんだよ畜生、あんなに近かったのに、ずっと授業聞いてたのに、廊下で話して、テスト頑張ったらなんとなく褒めてくれて、名前を呼んでくれて、時々注意されたり。そんなことしてて、次郎せんせーは確かに私の先生だったのに。
絶対届かないとこに次郎せんせーがいてそれが悔しくて、なんでもっと早くからアピールしとかなかったんだ私なんて思って。アピールしたって変わんなかったのかもだけど。
ああでも、次郎せんせー、こんな声が出るんだ、こんなに歌上手いんだ、こんなに踊れるんだ、知らなかったなあなんて思って。
次郎せんせー、楽しそうだな、次も、来たいなって気が付いたら、もう。

私次郎せんせーのこと好きだったんだけど、こういうのガチ恋って言うんだっけ?なんて1人で笑って泣いてさ。
気が付いたら次郎せんせーのCDとか全部買ってるし、ファンクラブ入っちゃってるし、3桁番号だってさ。
次郎せんせーは次郎せんせーじゃなくなったけど、やっぱり私の初恋やめらんないや、なんて思ったよ。


comics