SSS



0215
Thu

こもちちょぎを可愛がる審神者を見た長義を見た国広





「…………、」
「山姥切……、……主!!!山姥切が――」
「おい偽物くん、俺は何も云ってないんだが!!!!?」




0910
Sun

わんぱくぬいを可愛がる審神者を見た長義を見た国広





「…………俺の方が可愛いだろう」
「山姥切……、……主!!!山姥切が――」
「偽物くん!!!!!!」




0906
Wed

拝啓、愛しの近侍へ





貴方がこれを読んでいる頃にはもう私は生きていないでしょう
私は秀でた才能も、劣った能力もない何処にでもいる一介の人間です。なのに他者への妬みや僻みを沢山抱えて、なんて醜い人間だったのでしょう。私は特別な人間ではないのに誰かから求められたかったのです
審神者になって私のそれは満たされました。けれど、審神者というのは職業であって、私一人だけではありません。だからその幸福感は長くは続かなかった。だって、私だけじゃない。私以外にも審神者がいる
細々と、自分を騙し騙し今日まで続けていましたがもう限界です。私は必要とされていない。私の代わりなんて幾らでもいる。私は居なくても居なくてもいい存在だと気づかされました。いえ、目が覚めたというべきでしょうか。だから私は、もういきます。
世間から私は批難されるでしょうね。悲劇のヒロインぶるなとうるさく云われ続ける。ずっと、五月蠅く。私の気持ちなんて何も知らないくせに、ずっと批判だけ続けるのでしょう。でも、仕方ありません。死という救いに逃げる事を選んだ私は敗者です。敗者は虐げられるものですから
それでも、これだけは云います。私の気持ちなんて理解出来ないししようとも思わないくせに、好き勝手言いやがってうるさいんですよ。私は理解されたいとは思っていないのに。だから誰にも云わずに抱え込んでいたのに。それを周りは暴こうとするんだ
だから本当はこの手紙も書かずに消えようと思いました。けど、貴方の事が浮かんでしまったので。最期に私の気持ちを書こうと思ったんです。貴方を想っている間だけは、少しだけ日々の虚しさを忘れられていました。絶望に押し潰されそうな時も、貴方が居たからここまで細々と続けられていました
私の替わりの人は、きっと立派な人間でしょう。だから大丈夫です。そうして皆私の事を忘れていく。それでいいんです
でも、貴方に忘れ去られるのは構わないのに、後任の方が大事だと隣に貴方が立つのは、悲しいなぁ、なんて、思ってしまいます
最後まで私は醜い人間でしたね、御免なさい。私の事は忘れて下さい。どうかお元気で。




0906
Wed

私の刀(こいびと)





「……あのね、僕、結婚することになったんだ」


「だから、山姥切ちゃんに指輪、選んでもらいたいなぁって」
近いうちに審神者も辞めなければならないだろう。山姥切だけじゃなくて、皆ともお別れだ。寂しいな、なんて。思いの外心残りが出来てしまったのね、私らしくない。
私が生まれた時からの決まり事。互いに愛のない結婚だ、別にそれは文句ない。だって私は愛なんて信じていないのだから。
――そう、何時か終わる事が解っていた。そもそも、刀と人間では時間の流れが違う。共に居られる訳がない。だから、これはただのごっこ遊び。恋人ごっこ。それでも、幸せだった。
「それでも、僕……私は。貴方だけが好きよ。愛なんて下らないと思う私が、唯一好きになったの」
だから、さようなら。私の愛しい刀(こいびと)。
私はこの想いと共にいくわ。




0906
Wed

君の心臓が欲しい。






「山姥切ちゃんは僕を好きにならないでね」


何か在る度に、彼女は懇願する様に笑う。まるで赦しを乞う様な姿を見せられる度に痛むこの感情を、きっと彼女は知らない。それでも彼女の望む答えをあげるけれど、本当は君の心臓が欲しいと願うぐらいに恋い焦がれてると伝えたら。君はどんな反応をするのだろうか



[140文字で書くお題ったー/https://shindanmaker.com/375517]



0906
Wed

何時か、この想いが、消えますように





母の本丸を引き継いだのは、私が8歳の頃だった。仕事の都合で父が私の面倒を見れない時に何度か遊びに行っていた為、初対面というのは余りなく皆もスムーズに受け入れてくれた……と思う。
尤も、彼らがどういう存在なのか、母がどんな仕事をしていたのかを知ったのは私が中学生になった頃だ。その辺りから少しずつ簡単な雑務をする様になって、そこで色々と知ったのだ。今までは母の初期刀がやってくれていて、高校生になって正式に審神者となった私は彼に助力を乞いながら審神者の職務を全うしている。未だたどたどしい私を、彼らは微笑みながら見守って手伝ってくれている。これからも、迷惑を掛けるだろうな。
けれどもきっと、彼らは何も云わない。私が、母の子供だから。
それが酷く虚しく感じるようになったのは何時からだろう。私を見ているようで、見ていない彼らに。彼らにそんな意図はないかもしれない、ただ私がそう感じるだけで。だけど、それでも、私を突き刺す棘には変わらない。
仕方がない事だとは解っている。だって、彼らは母によって顕現された刀なのだ。老衰ではなく、事故で亡くなった母の死を受け入れがたいのだろう。……それでも、
「……主?どうかしたのかな」
「あ、ううん……何でもない」
学校まで迎えに来てくれた近侍に声を掛けられて、私は我に返った。
学生でもある私は本丸から学校に通っており、護衛として授業が終わる頃に近侍が校門まで迎えに来てもらうことになっている。私の近侍、山姥切長義。本丸で暮らすようになってからずっと世話を見てくれた刀だ。母の近侍を担当していたらしく、だからこそ、本丸に来たばかりだった私の世話をしてくれたのだろう。
ずっと傍で、優しくしてくれたヒト。だから、私が彼に恋するなんて。当然の結果だった。
――でも、この想いは、届かないのだ。
「そういえばもう直ぐ誕生日だったね。何か欲しいものはあるかな?」
「……、考えとくね」
咄嗟に出そうになった言葉を私は噛み殺した。
私の欲しいモノ。一番欲しいモノは、あるんだ。けれど、それが絶対に手に入らないモノだと知っているから。私は俯いて唇を噛みしめる。悪くない、彼が悪い訳じゃない。悪いのは私の方だ。こんな想いを一方的に抱いた私が悪いんだ。
「……あのね、長義。母さんの話、聞きたいな」
またかい?と困った様な表情を浮かべる長義に私はうん、と頷いた。
だってね、母の話をする時だけ、私には一度も向けたことの無い顔をするんだ。懐かしそうに、愛おしそうに。
母にだけ向けられただろうその想いが私も欲しくて。それは私のモノではないと知りながら、今日も私は、母の話を振るのだ。




0906
Wed

僕の心臓を食べて、




※転生ネタ
※前世ちょぎさに♀からの今世ちょぎモブ♀でちょぎ←さに♀


私が全てを思い出したのは知らない女と仲良く歩いている所を見つけた時だ。泡沫の如く弾けては流れて同化していく記憶に胸を掻く。咄嗟に彼らの死角に隠れて、込み上げる感情を落ち着かせようとした。けれど、無理だった。自然と溢れ出る涙を拭うことさえ出来ない。なんて酷いんだろう。私はただただ悲しみを抱き続けるしかないのだ。
この想いごと、抉ってしまいたい。
鼓動が五月蠅くて仕方ない。無意識に爪を立ててしまったのか皮膚に痛みが走るけれど、今の私にはどうでもいい事だった。
いっそなくなってしまえばいい。そうしたらこんな想いも、何もなくなって、ただあの頃の思い出を抱いたまま、私は消えれるだろう。
けれど浮かんだその思想も一瞬にして冷水を浴びた様に醒めてしまった。なんて無意味な事考えているのかと自嘲が零れ落ちる。
「……馬鹿々々しいわね」
意味のない事で泣いて、縋りついて。
そもそも私はもう、彼の主じゃない。彼だって刀でなくて、ヒトの子だ。誰かと付き合って、結婚して、家庭を持つのも彼の当然の権利。その隣に立つのが私じゃなくて、全く知らない女なのも全部彼の、山姥切の自由だ。私以外に笑い掛けて、言葉を紡ぐのも。今は他人である私が口を出すことじゃない。そう、今の私と山姥切は顔も知らない赤の他人だ。
ぽろぽろと零れ落ちる涙と共に居れば、何時の間にか山姥切達は消えていたけれど。私はもう暫くそこから離れられないでいた。思い出さないでいたかった、そうすれば貴方を忘れたままでいれたのに。ずるずると座り込んで、瞼を閉じた。




0906
Wed

お姫様には成れない




※転生ネタ
※前世ちょぎさに♀からの今世ちょぎモブ♀からのちょぎ←モブ♀



――済まない、別れて欲しい。

絶対に取り乱すと思っていた私の心は、意外に静かだった。……きっと、何れこうなると解っていたから。だから、だろうなぁ。
切っ掛けは隣のクラスの転校生だった。廊下から教室の椅子に座って窓の外を眺めているのを偶々彼――長義と見た時。あれが噂の転校生さんかぁと暢気に話し掛ける私に反して、彼は酷く動揺していた。長義?と声を上げる私に気づかない様子で、転校生さんを見ていたのだ。ねぇ、と彼に触れようとした所でぽつりとあるじ、と零れ落ちた言葉に私は固まった。主?何のことだろう。何故か嫌な予感がして、同時に初めて幼馴染みが遠い存在に思えてしまって。私は思わず泣きそうになった。きっと顔にも出ていたと思う。――何時も一緒だったのに。私が、彼の一番だったのに。悔しい、悔しい。
あの転校生さんと一方的に逢ってから。私達の関係に綻びが生じたのだ。私と居ても、何処か心ここにあらずといった感じだった。そう思うのは私が長義の幼馴染みだから。いつも一緒に居たから、解るんだ。
きっと彼は、あの転校生さんが、
「……もしかして、ううん、もしかしなくても転校生さんだよね?」
私の問い掛けに彼は一瞬だけ顔を強張らせた後、目を伏せながらただ一言、済まない、と呟いた。
「…………大丈夫。」
うん、大丈夫。
私はにっこりと笑い掛けてうん、ともう一度だけ頷いた。
「私達、ただの幼馴染みに戻ろう。けど、……けど、一言だけいいかな」
漫画の世界と現実の世界は違う。解っていた、解っていたのに、高望みしちゃった。私みたいな平凡なのが彼と付き合える訳がなかった。ただ幼馴染みだっただけで私はその居場所を手に入れた。けれど、漫画みたいに報われはしないのだ。


「――私、昔からずっと、長義が好きだよ」



結局、私は。彼のお姫様になんか為れなかったの。




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