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「何してるんだ?」
縁側に腰掛けぼーっと外を眺めていると後ろから声がかかった。大好きな人の声だ。
「にゃあさん、ええと、桜もう散っちゃったなぁって。来年になればまた咲くのはわかってるんですけど……」
"やっぱり寂しいなぁ"と、そんな言葉を零す。
「桜は散るから美しいんだよ、お嬢さん」
「そういうことじゃないんですよう」
「はは、わかってるさ」
「もう……」
くすくす笑いあってるとふと大般若さんの笑い声が止んだ。何かと思い振り返ると唇に柔らかく温かいものが触れた。それが唇だと気づくのにそう時間はかからなかった。
「〜〜〜!?!?!」
「桜が見たくなればこうやって口付けしてくれればいいさ」
「は、え、あっ、誉桜……」
大般若さんの手の中には薄紅色の桜の花びらが乗っていた。刀剣男子の身から出る(?)花びら。正直よく原理はわかっていない。
「ええぇ、び、びっくりしたぁ……」
「茹でダコみたいだな」
「……人の初めてをさくっと奪っておいていう台詞がそれですか」
「おお悪い悪い」
ふっと笑ったかと思えば耳元に唇を寄せてきて
「ご馳走様」
とひとこと。
私は声にならない声を上げ無意識に後ろに下がろうとして後ろに着いた手を滑らせてそのまま庭に落ちた。
「いったぁ……!」
きょとんと瞬きをしていた大般若さんがげらげら笑っているのが目に入る。
「笑われてるところ申しわけないんですけど貴方のせいですからね!?!?」
「いや悪かった、俺も落ちるとまでは思わなかったんだ……ククッ……」
「笑いが!堪えきれてない!!」
立ち上がり土を払いどうにか仕返ししてやろうと大般若さんの服の襟を掴みぐっと距離を詰め口の端ギリギリにちいさく口付けを落とした。
「……すきあり、ですよ」
自分でやっておいてなんだがなかなか恥ずかしい。ちらりと大般若さんの方を盗み見ると口元を手で抑え頬を赤く染めた姿が。
「え、なんですか、その反応……」
「いや、こんなはずじゃなかったんだけどな……あんたといると自分が存外初心だと思い知らされるよ」
「かわいい……」
「こんななりした男のどこが可愛いんだか」
「いや、かわいいです、かわいい、すき」
見たことないような可愛らしい反応にどきどきした。
「あんたには敵わないな」
ひらひらと花びらを舞わせながら笑う大般若さんはすごく綺麗だった。
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2018.4
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