今日は中秋の名月。自宅からは生憎の曇り空で月も星も見えなかったが本丸の空には綺麗に月が浮かんでいた。縁側に腰掛けて月を眺めていると隣に大般若さんが。

「……呑まないんですか?広間でみんな呑んでますけど」
「あんた、呑まないだろう?」
「呑みませんけど」
「そういうことだ」
「別に気にしなくて良いのに」
「あんたと一緒が良いんだ。それに酒くさいと近寄らせてくれなくなるだろう?」
「そんなこと……まあ、ありますね〜」
「……今はさくらこと月を見るだけで充分さ」
「ふふふ、わたしもです。知ってます?お月様って好きなものの味がするんですよ!」
「じゃあさくらこの味がするんだな」
「そういうことじゃないです。ていうかわたしの味って何……?」
「そうだなぁ……甘い甘い、癖になる味って所か」
「……っ、」

ふたりの唇が重なる。

「ほんまにそういうとこ……!」
「好きだろう?」
「いけしゃあしゃあと……!もう!しばらく不意打ちでするのは禁止です!」
「おや、許可を取ればいいのかい?」
「許可というか予告というか……とにかく!だめ!」
「誰も見ていないのに?」
「お月様が見てますけど」
「見せつけてやれば良いさ」





2021.9.21



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