番外短編(異言語)



「失礼しまーす」

「あぁ、待っていたぞ」




社長室に行くと、ビズリー社長は私を見てそう言ってソファーに座るように促した

今日は社長と約束していたあるものを持ってきた。それは……




「これにいっぱい載ってます」




私が持ってきたのは、元々使っていた携帯

なぜ持ってきたかと言えば、ビズリー社長からまた私の故郷の文字を見たいって言われたからね

ひらがな、カタカナ、漢字……これが全部入った辞典が携帯にあるからそれを見せたら手っ取り早いかと思った




「ほぅ、君の故郷の文字はたくさんあるな……」




さっそく見せると、社長は自分で操作をして見始めた




「……やはり面白い形をしているな」

「面白い形?」

「あぁ、これのように丸を描いた文字とか」




ビズリー社長が指差すのを私も見た




「あぁ、“の”ですか」

「それと……これもいいな」

「…?」




次に出して良いと言ったのは…




“淫”




「……え?」

「ん、どうした?これは何と読むんだ?」

「あっ!い、いえいえ!何でも……それは……」



い……ん…?

ど、どうしよう…




「い……ですね」




最後の言葉を濁すような感じに言った




「ほぅ。“い”なのか……む、これもいいな」




私が言ったように“い”だと思ったビズリー社長が次に指した文字は…




“乱”




淫………ら……?



っ!!あ、いやいやいやいやいやいや!!

そっ!そんな…そんな社長に限って…!

これは偶然!たまたまそうなっただけで、ビズリー社長は何も知らなくて…!



1人で変な考えをして自己解決していると、社長が私にある頼みごとをしてきた




「なぁ、リル。この言語で“ビズリー・カルシ・バグー”とはどうやって書くんだ?」

「え?」

「書いてみてくれないか」

「はぁ…」




書くのはいいけど…どうしよう



カタカナだと普通すぎる…



じゃあ平仮名で…



“びずりー・かるし・ばぐー”



…幼い感じだな




だったら、漢字であて文字…



“美頭里猪・駆流志・芭愚宇”



……夜露死苦よりひでぇ




なら、英語…フランス語…



って、書けない!!




あ、待てよ…




「(本当に…どうせ読めないなら…)」




私はある考えを思いついた

これは普通にやったら怒られる……いや、人によっては処刑されそうだけど……

一か八か自分に賭けてみた












「出来ました…」

「どれ…」




私が書いたのは…










“びずり〜・雷眉・サンバ!”







危うく吹き出しそうになりながら見せる


そう。これは日本語がわからない外国人が、変な日本語が書かれたTシャツを着ているのを思い出して思いついた結果だ!

本当にわからないなら、何を書いても大丈夫

けど、バレたら終わりだ


さぁ、どうなる…!?


期待と不安で胸がどぎまぎしてて落ち着かない…!




「なるほど、私の名前はこのように書くのか…








素晴らしいな…!」



「本当ですかっ!?」




そう言ったように、ビズリー社長は目を輝かせながら“びずり〜・雷眉・サンバ!”を見ていた

よかった!これは本当に読めない人の反応だ!

私は笑いを堪えながら「よっしゃ!」と心の中でガッツポーズした




「丸い文字と角張った文字の両方で綺麗だな…気に入った!この紙をくれないか?私の机に飾りたい!」

「え……え゛え゛え゛ぇーーー!?」




心の中で喜んでいるのもつかの間

なんと、この“びずり〜・雷眉・サンバ!”を誰でも見れる……自身の机に飾りたいと言ってきた!

まずい!そうなれば、誰にも読まれないが…

“かっこよく座っている社長が自分の近くに変な名前の書かれた紙を自慢げに置いている”って言うおかしい絵面になって、私だけが毎回笑いを堪えないといけない!!




「あ、あのっ!私は文字が下手なので、こんな粗末な物を見られたら…」

「気にするな。私達は君が書いた文字が上手いかはわからないが、私にとってはなかなか味があって良い見栄えだと思うぞ」

「は、はぁ…」




こうなったら、もう今更撤回できない…

あまりに反対したら怪しまれるって思って、私は渋々了解した






こうして、社長の机の上にあの紙が入った写真立てが置かれた

リドウ副室長とヴェルさんには私の故郷の文字だって説明したけど、読めないから何も気にせず見ている

ユリウス室長などの他の社員達は何も知らないから、ずっと首をかしげているらしいです



私は……しばらく直視しないようにしました




END
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