はじめまして異世界よ



薄暗い夕暮れ時

俺達調査兵団はこの日の壁外調査を切り上げるため、引き返して森の中を馬に乗って走っている

森の中ってだけでも暗いのに夕暮れ時だから、いつもより暗く何が来るかわからないため辺りを警戒していると、俺達の後ろから明らかに馬の走る音ではない音が近づいてきた




「巨人が来ました!」

「チッ。奇行種か…」




部下の一人がそう言うと、前を走る上司が戦闘体制にはいった

そしてすぐにワイヤーを数メートル先の木に刺して乗っていた馬から飛んで移動すると、そのまま右側から現れた奇妙な動きをする巨人のうなじを切り付ける




「(やるなぁ〜流石は兵長だ)」




見事に巨人を倒した上司……兵長と呼ばれる男を見て、どんな場所でも関係なく確実に急所を狙って倒せる戦闘能力に尊敬してると……




「ユーリィ!左側だ!!」

「えっ!!?」




そう叫ばれたと同時に慌ててガスのみで空中に飛ぶと、左側から大口を開けた巨人が滑り込むように突撃してきた!

…危なかった。あと数秒遅れていたらあいつに食われていたと思うと恐ろしい

兵長本当にありがとうございます…って心の中で感謝したけど、集中していなかったからこれは帰ったら説教されるかもな

兵長の説教は長くてウザくて嫌なんだよなぁー。おかげさまで助かった身が文句言えないけど

なんて、今から帰った時の事を考えて気持ちが萎えそうになったけど、今はさっきみたいに油断したら説教どころでは済まされないなって気持ちを切り替た

自分の馬と合流するため、木を渡って行こう

数メートル先の巨大樹を目指してガスのみで飛行して枝に足を着けたら…




バキッ!!!と大きな音を立て枝が折れる!






「(まずい!枝が腐っていたか…!)」




まれに腐った枝に乗って落ちることがあるのは経験済み

だから、俺はあまり焦らずにすぐに体勢を立て直そうと、今度はワイヤーを使って別の木に移ろうとした






が、ワイヤーの起動スイッチをいくら押してもワイヤーは出てこない






そう、これはまさかの






……………故障だ





「きゃああああああああああ!!!」






そのままどうする事も出来ずに落ちていく俺は……


兵長の説教をウザいって思ったから天罰が下ったんだ…!って絶望した






























「ん………」




目を開けてみると、どうやら地面に倒れて気絶していたみたいだ

そう確認すると違和感を覚える

なんだ…この感覚は。何がおかしいんだ…?

少し考えてその事に気付くと、勢いよく起きて全身を確認した




「(どこも…怪我していないだと…!?)」




あの巨大樹から落ちたっていうのに、身体に痛みは無いどころか打撲とかの傷跡が全く見られないし骨は折れてない!

どういうことだ…!?

慌てて周りを見ようとバッと後ろを振り向いた俺は……

心臓が止まりかけた




そこには高身長のひょろっと細い身体に大きな黒い目が見えて、咄嗟にスナップブレードを構えた





「(巨人か……!?)」




巨人にしては小さめだがパッとそう判断して、すぐに近づかれないようにブレードを横に斬るように振る





「ピギッ!!な、なんや!?」

「っ!?」




避けられた焦りが出たが、すぐに別の事に気付いて驚く…

なんとその巨人らしき者が言葉を話した!

……え、まさか





「お前……巨人じゃないのか?」














――――――――――








「すまない、てっきり小さめの巨人かと思った」




慌ててブレードをしまい事情を聞くと、どうやら気絶して倒れていた俺をどうにかしようとしていたらしい

その背の高い人間…黒髪で変わった服を着た男は、目の前で剣を振るわれた驚きがまだ消えない様子で、少し怒っているようだった




「本当にすまなかった」

「……」




再度謝ると彼は無視

あちゃ〜これはかなり怒ってるかも。何せ巨人と間違えられたから仕方ないな

これは憲兵の方とか俺の所属する調査兵団に来て、一般人なのに巨人と間違えられて斬られそうになったって訴えにくるかも。うわ〜!なんとか許して貰わないと…




「本当にすまない!壁外調査で戦闘の緊張が解けてなくて…」

「……別にもうええよ」




ようやく口を開いてくれたと思ったら、何やらダウパー村の人達みたいな訛りが混じった喋り方でそう言った

許すって事かな?聞き取れた言葉から考えてると、男は目の前の変わった形の建物に入ろうとしたのを見て、急いで彼を止めて話しかける




「ちょっと待ってくれないか!」

「…ファ?」

「他の調査兵達はどこ行ったのか知らないか?」





そう俺は壁外調査の帰りに巨人と遭遇して巨大樹から落ちたはずだけど……ここでこうして無事でいられるのも、仲間達が助けてくれたはずだ

しかし、ここにいるのは俺とこの男。じゃあ居るはずの仲間達はどこに行ったのかが疑問で、この男なら何か知ってるだろうと思って聞いてみたけど…




「ちょうさ…へい?なんやそれ」

「なっ…調査兵団って知らないのか?」




なんと、男は調査兵団と聞かれて何の事なのか知らないと言う

……いや、そんなはずはない!壁内に暮らしていればどんな兵士でも必ず見かける。こいつは俺をからかっているの?




「おい、お前のおふざけに付き合っている暇は無いんだよ。こうしている間にも夜になって……」




男にそう怒りながら周りをよく見渡すと…


変わった素材の建物が他にも沢山あって、すぐ後ろを車輪二つのおかしな物に乗って通りすぎた人を見かけた




「は?い、今のは……」




見間違いだって思いその後を追うように見ると、そのおかしな物が通った道は灰色の固まりに白い線が敷かれていて、道の先々に石で出来た柱があって何本ものワイヤーが張られている




……………え?




「なっ………………何だあああああああ!!!?」

「ピギッ!!?」




間違いない!ここは俺の知っている壁内の国じゃない!!なんだここは!!?