エクルとひねくれ男編




「なあいつか殺してくれよ。おれの死に神になってくれ」
甘えた声で男は言った。
エクルは、「いいよ」とこたえた。

死にたいんだ殺してくれよと言われたことだけを覚えている。だれを殺すんだっけ。この人だったかな。しにたいっていってるし、ということで、死にたい人を殺しまくるようになる。
子供だからかなんなのか、例のありがたい力は何故だか使えない。叶えようとする本能が強烈かつ刷り込みがあるため自力でなんとかする。迷いなくやる。不思議と目立たない。

男にあった時エクルは餓死寸前だった。本当はそのまま衰弱死しているところを、男が強引な手段で生きながらえさせた。
ああまだ力がないんだな。子供だからか死にかけだからか。取り戻したら、あらためておまえに会いに行くよ。そのときはかならず叶えてくれよ。
助けるだけ助けて、言うだけ言って去っていく。
エクルは食べまくって何とか生きてる。燃費の悪い命。

殺し屋家業は食費のため。アッシュの発案。行くさきざきで殺してるのを見て。エクルがいうのもあり。殺してくれって言われたから、って。
「誰にです?」
「わかんない。ころしてほしいひと。しにたいひと」
「よく今まで見咎められませんでしたね」
まるで本物のしにがみみたいだ。アッシュは苦笑する。すっかり苦笑が板についた。
諜報員時代のノウハウを活かしておしごとする。あなたに「殺してほしい」人がいます。
「ころしてほしい」に反応。
エクルには天職だとアッシュは思っている。


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