keep running
私は走っている。休むことなく全速力で。
一歩ごとに足は熱した鉄を押し当てられるように焼け爛れる。
しかしそれでも走らなければならない。後ろの道は焼け落ちて既にないのだ。
突き刺すような焼け付くような痛みに追い立てられて、私はずっと走っている。
もうどのくらい走っているのだろうか。
一時間、五時間、いや、一日中走っているのかもしれない。
のどが燃えているようなひりつく痛みにはもう慣れた。
けれど、苦しい。肺がからからに乾いて、肋骨にはりついてしまいそうだ。
鳩尾はずっと鈍痛を抱えていて、時折思い出したように鋭く針を立てる。
耳障りなぜえぜえという音は、熱く乾いた自分の呼吸だ。
けれども立ち止まることはおろか、速度を緩めることすら叶わない。
得体の知れない灼熱は、私のすぐ後ろに迫っているのだから。
緩やかに曲がる狭い道は、緑がかったアスファルトで舗装されている。
すれ違うことはできない幅の外は、奈落の底へと続いている。
苦しい疾走のなかちらと振り返れば、すぐ後ろの地面は真っ赤に燃え落ちていった。
炎を噴き上げるでもなく、ただじりじりと私を追う炎。
ああ、逃げられない。
何度目かの絶望感を味わいながら、それでも、私は走らずにいられないのだ。
この運命を私に課した存在は、余程私を憎んでいるに違いない。
行き止まりになった道を前方に見据え、私は出所のわからない乾いた笑いを漏らした。
体がばらばらになるような痛みをこらえて、こうして走り続けても、結局は追いつかれてしまうのだ。
炭でおこした埋火のような致命的なあの灼熱に、私はじりじりと焼かれ灰になる。
なんという皮肉。誰が用意したのか、この緑色の道はただ私の死のみへと終結するものだったのだとは!
あと数歩で行き止まりだ。私は足を止めることなく、走り続けた。
行き止まりが来ても、きっと走り続けるだろう。
「あ、おちた」
「あーあ、あそこで止まっていれば、楽にしてあげたのになあ」
二人の子どもがしゃがみ込んでいた。兄弟だろうか、大きなほうの子どもは殺虫剤を手にしている。
彼らは数時間の間、飽きることなく同じ姿勢でじっとしていた。小さな関節はこわばっていて、立ち上がるとパキッと鳴った。
「やばい、お母さんに怒られるぞ。2時間で消してって言われてたのに!」
「にいちゃんが、ムシをのせてみようっていうからー」
「人のせいにするなよ! ほら、帰ってくるまえに何とかしなきゃ」
「まどあけとこうか」
「アミドは閉めとけよ、蚊が入るから」
燃え尽きて、すっかり灰になってしまった蚊取り線香を部屋のすみへ押しやって、兄弟はあわただしく駆け出した。
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