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私には好きな人がいる。手足がないオンナノコしか愛せない、ちょっと変わったシュミの人。
中学生のときにヒトメボレして告白したんだけど、断られた挙句にそんなカミングアウトまでされちゃった。

今は彼も私も高校生。でもまだ私は彼がすきだ。それなのに彼にはコイビトができちゃった。

両足がないオンナノコ、車椅子にのってる彼のカノジョ。

周りのコはみーんな驚いてたけど、私だけは納得しちゃった。
彼を見てると、ほんとに手足がないオンナノコが好きなんだなぁって思う。

だから、ちゃんと彼を応援してあげるの。私の三年間のカタオモイはこれにて御終い。

そう、閉じたはずだった。私は呆然と彼の瞳をのぞきこんでいた。
目の前で真面目そうな彼の黒髪が揺れる。
ふわりと香るシャンプーの匂い。
涼しい顔をしてるのに、私をベッドに縫いつける彼の手は汗でベトベトしていた。

なにこれ。

キョロキョロと辺りを見渡していたら、床にノコギリが転がっていた。

「俺さ」

真っ黒に塗りつぶされた彼の瞳が夜の海のように揺らめく。

「アンタのこと、すきなんだ」

ああ、ああ。そんなこと言われても、きみにはカノジョがいる!
わたしがそう目で訴えてもなお、彼は言う。

「ほんとうに好きなのは、アンタだけだよ」
とてつもなく甘い声だった。
「三年前からずっとだ。告白されたときは夢かと思った」

彼は私の視界から一旦消えて、床にあるノコギリに手を伸ばした。
私は起き上がろうとしたけれど、いつの間にか手首に鎖が巻かれていて動けなくなっている。

物騒な夢だこと。だけどぱちぱちとまばたきをしてみても、一向に目を覚ませそうにない。
彼が私を好きだなんて、そんなこと現実にあるはずがないのに

「本当にアンタのことが好きだったから、手首ひとつすら切り落とせなかったんだ」

そう言って、ノコギリを持った手とは反対の手で私の手首をなぞる。
生きているのを確認するような触り方に、ぞわりと鳥肌がたった。

「カノジョとは、」彼は畳み込むように口を開く。

「別れた」


「だってアイツ、アンタを見て『あんな風に走れて羨ましい』って言ったんだ」

彼が、私の投げ出された太ももにそっと触れてきた。
まるで触れられたそこが心臓になったかのように、ドクドクと血が巡りはじめる。
「俺が好きで好きで堪らないアンタが、足を持っていて幸せなはずがないのにな」
ノコギリが私の太ももにあてがわれた。

ん?……あっ。

「痛い!」

私はもう片方の足で彼の頬を蹴り上げた。鈍い音をたてて彼が視界からいなくなる。
しかし、ガチャガチャと手首の鎖は全く外れそうにない。
そんなことをしている内に彼が立ち上がった。ガシャリと足首に重い枷がはめられる。彼は動けなくなった私の頭を撫でた。

「俺はアンタが好きだよ」

好きを吐き出す彼の唇に釘づけになる。そんな私を見透かしたように彼は小さく笑った。

「でも、まだカノジョにはしてあげない」

ぐさり、刃が肉を切り裂いて骨に当たる。わたしは、彼の好むオンナノコになれるらしかった。