青い蝉が死んだ

あなたのあおじろい膚がひかりを跳ね返すように発光しているので、取り敢えず、笑ってみました。あるアパートのちいさな部屋、そう新しくは無い畳の上に、あなたは四肢を投げ出し、天井をじいっと見詰めているけれど。楽しいですか。締め切った窓から差し込む陽の光が、舞う埃を輝かせる。

「蝉 うるせえな」

『…』

「…」

そんなこといわないで 蝉達はすぐに死んでしまうのだから。鳴き始めた頃にはあのこたちもうボロボロなのかしら、内臓色悪いのかしら。だけどあなたが黙らせろと言うのならわたし全部黙らせてきますよ。きっときっとあなたをしあわせにしてあげますよ

「違う世界にいきたい」

ああああああ。窓の外には夏の空が青々と広がっている。こんな生き方しかできないから。みーんみーんみーん。わたしもあなたも蝉だったら良かったかもね。お外に出て瑞々しい空気をこの肺に取り込んだなら、すこしはマシになれるのかもしれない。

『このままでいいの』

「分からない」

あなたはゆっくりと、呼吸している。世界に溶け込んでいるあなたを見るのは辛い。ひとみが潤ってきた気がして、天井を見詰める。あ、もしかしてあなたも泣きたかったの。涙が零れないように、一生懸命天井を見てたの。そうなの?

天井に幾つかシミを発見したので、数えてみようと思います。沢山あるから、暫く日課に困りません。一二三四…六……九、十…。あたたかいものが頬を滑り落ちた。悲しくて泣いているのでは、ないのですよ。

みーんみーんみーん。