爽やかな風が髪の毛を揺らす

「今日もいい天気ナリ」

ひとつ大きく背伸びをしたあと、屋上の日陰に寝転がる。気持ちのいい青空と涼しい風に誘われて、俺はゆっくりと瞼を閉じた。

どのくらい時間が経ったのだろう、いつの間にか寝てしまっていたようだ。ここに来たときは丁度よかった気温も少し上がり、昼が近いことを告げていた。そのとき、タイミングを読んでいたかのように鳴るベルの音。少しすればこの屋上にも昼食をとろうと人が集まってきていた。

「仁王」

俺を上から見下ろす男が一人。寿陽和、俺と同じクラスで、…俺が好きな奴だ。多分さっきの授業に出ていなかったことを心配したのだろう、こいつはそういう奴だ。

「なあ、仁王」
「なんじゃ?」
「弁当持ってきたから、一緒に食おうぜ!」

ニコニコ笑う顔。キラキラと輝く太陽の光と相まってとても綺麗だ。
よくある会話だけれど、俺にとっては陽和と過ごせる時間は何物にもかえがたい大事なものだ。陽和はきっと、軽いノリで言っているのだと思う。友達に言うように。

この関係の先に行けたら

そしたらどんなに良いだろうかと何度も考えた。そしてそのたびに告白してしまおうかと考えた。けれど面白いことに、陽和とこうして二人で居ると、そんなことどうでもよくなってしまう。確かに恋人になりたいかと聞かれたら答えはYESだ。でも今すぐに恋人になりたいわけではない。

今は、こうして二人で居られるというその事実だけで十分だ。隣に陽和が居て、たわいもない話をするこの時間を大切にしたいと、俺は強く思うのだ。



俺は幸せだ、今はまだ、それでいい。