俺には恋している相手が居る

その人は1つ年が上で誰にでも優しく、男女共に人気のある人だ。異性から告白されたことも、何度もあるだろう。俺だって、出来ることなら告白したい。けれどそうすることが出来ない決定的な理由が1つ。

俺の想い人である寿先輩が男であることだ

いくら優しい寿先輩だからと言って、同性から告白されたら困ってしまうだろう。それに、寿先輩と俺は非常に仲がいいわけでもない、部活は同じだが俺は正レギュラーで先輩は準レギュラーだ。練習内容も部室も違う。

「……はぁ」

どうすることも出来ない気持ちにため息を吐きながら校門を出る。目の前には仲良く手を繋ぐカップルが何組か居て、少しだけ羨ましいと思ったり。

「…日吉ー!」

そんなとき後ろから俺を呼ぶ声が聞こえて振り返ると、向こうから走ってくる寿先輩が見えた。俺の側まで来た先輩は一緒に帰ろうと俺を誘った。一瞬言葉を理解できず固まっていたら、先輩が心配そうな顔で覗き込んできたので思わずすごい勢いで頷いてしまった。ふと見上げると、先輩はその様子を見て笑っていた。

「日吉ってさあ」
「…なんですか?」

下校途中、不意に先輩が呟いたので返事をすると

「日吉って好きな奴いんの?」

にやにやとした目で聞かれてまた思考が止まりかけたがなんとか踏ん張り、逆に先輩に質問した。

「先輩はいないんですか」
「……いるよ」

想いもよらなかった真面目な答えにおもわず動きを止めてしまっていたら、数歩前で足を止めた寿先輩がこちらを振り向いた。

「日吉!」
「?」

「俺、日吉が好き!」

そう叫んだ先輩はくるりと前を向いて歩き出した。少ししてやっと言葉の意味を理解した俺は、真っ赤な顔で先輩を追いかけた。


「まって、先輩」
まだ、俺の気持ち伝えてないでしょう?