強く生きろ name 3 面白そうだったからとりあえず話に乗る形で、松平のとっつぁんの娘のデートの邪魔をするために近藤さんと土方ととっつぁんの四人で遊園地に来ていた。 ジェットコースターに乗って脱糞をした近藤さんの服を買って着替えさせ、俺たちはどこか休める場所をとベンチを探していた。 その時、キョロキョロしていた俺も悪いのだが、前を歩いてた人とぶつかってしまったらしい。思わず舌打ちが出そうになったが、なんとかこらえてその人の腕を支えて前を向けば、シンプルな花柄の着物を着た女性が慌ててこっちを見て謝っていた。 「すみません...!!」 「いや...?」 その声は、これまでに数回聞いたことのある声で。 見上げた顔も、何度か見たことのある顔で。 あ、朱理...と、俺の頭には彼女の名前が浮かんでいた。そうだ、旦那の店の下の階のスナックで働いているという女の人だ。 花見の時と、つい最近、真選組の屯所の前で見た。多分年上のその人は、いつも笑顔で旦那やメガネとクソチャイナと話していた。いかにも普通の、血なまぐさいことなんて何も知らなそうな無垢に見える人だ。 その人が俺の名前を呼ぶ。俺の名前を覚えていたのかという驚きで、何も言わずにただ首を縦に振ればその人はまた笑顔を浮かべた。 また、笑ってる。 するとすぐに、心配そうな顔をして、着物は汚れていないかととても丁寧な言葉で言われた。 「俺は、大丈夫でさァ...貴方の方こそ、何も零していやせんか...?」 それに感化されたのか何なのかはわからないが、いつもの俺らしくもない、至極綺麗な言葉口調が思わず口から出た。 その人の手には飲み物が二つと大きめのポテトとかが置かれたボックスがあって。まぁ一人で来たわけではないだろうなと思っていたけれど、誰と来ているのだろうかと不意に思った。 彼氏か?まぁ、彼氏いそうっちゃーいそうだけれど...。 そう思うとどこまでもそう思ってしまうようで。ニコニコと笑っているその人、朱理さんに俺は聞こうと決心して口を開いた。 その時、後ろから近藤さんが俺の名前を叫ぶ声がして、思わず舌打ちを零した。 だけどすぐに、目の前には朱理さんがいるといことを思い出して今のは違うんだと弁解するかのように手を振る。 きょとんとしてる朱理さんに、聞こえてなかったのか、と内心ホッとして、呼ばれてるから、と戻ることを伝えた。 それに対してにこりと笑って朱理さんは、もう一度頭を下げると、足早にジェットコースターのある方向へと向かっていった。 やっぱり彼氏だろうか...俺はその背中が小さくなるまで見続けて、ベンチの方へと足を向けた。近藤さんの隣に座れば、なぜか不思議そうな顔をした近藤さんに「顔赤いぞ、総悟。ジェットコースターやっぱり怖かったか?」と聞かれたので、とりあえず殴っておいた。 |