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修学旅行も終わり、通常の授業に戻った。
またいつものように坂を登り、教室まで愛美と話しながら歩く。
「転校生どんな子かな〜」
「おそらく暗殺者ではあると思うんですけど...」
「まぁあの書き方からしてね...」
昨日、烏間先生から一斉にメールが送られてきた。
明日から転校生が来る、外見に驚くと思うだろうが仲良くしてやってくれ、と。
外見に驚くってどんな外見してるのかな〜と考えながら教室に入れば、一際目立つ黒い物体が。
「おはようございます、今日から転校してきました。自律思考固定砲台と申します。よろしくお願いします」
と、機械らしく感情のない声でそういったのは、暗殺者であるといつ自律思考固定砲台。
見るからに機械で人ではないと思うけれど、これも立派な暗殺者らしい。
私は後ろの席だから、比較的その機械と近い。
背後に感じる謎の物体の気配を感じ取りながら、私は黒板を見つめた。
一時間目。国語の時間に、その自立思考固定砲台さんが発砲をしだす。授業中の発砲は禁止になっているため、少しいらっとしていると、徐々にその機械が発砲を長くしていく。
うまく避けていた殺せんせーだけど、そのうちの一つの玉に当たって、私たちは驚いた。
今までだってこういう暗殺は私たちでしていたけれど、当たったこともなかったのに。
「右指先破壊。増設した副方の効果を確認しました。
次の射撃で殺せる確率0.001%未満。次の次の射撃で殺せる確率0.003%未満。卒業に殺せる確率99.9%以上。
よろしくお願いします、殺せんせー。続けて次の攻撃に移ります」
そう微笑みながら言う機械だけど。はっきり言って私は、自分のキャラがかぶってるようで嫌だった。
「...これ、全部片付けるの?」
授業が終わって、床を見れば一面玉だらけ。
はぁ、とため息をつきながらロッカーに入っているほうきを出してはいていると、寺坂くんたちグループがいるところに近づく。
「なんかお前イラついてんな?」
「だってあれ、機械だから数学とか物理キャラでしょ?私とかぶるじゃん!!」
「そこかよ」
村松くんと吉田くんが苦笑する。
はっきり言ってこれは死活問題だ。私はほうきを片手で握りしめて、もう片方の手を腰に当てる。
「いいよね〜寺坂くんたち三人はさ、かぶってる人いないじゃん」
「どういうことだよ?」
「つまりバカキャラ?」
「お前な...!!」
寺坂くんに指をさしながらそういえば、寺坂くんがこめかみを震わせながら拳を握る。
それを見て笑っていれば、村松くんと吉田くんが、そこはいてくれてありがとうなとお礼を言ってくれた。
「ううん。私今日掃除当番だし」
「わりーな」
「そう思うならあの機械さんどうにかしてよ」
「なんで俺にだけ言うんだよ!!」
寺坂くんの足を箒でガツガツ当てながらそういえば、また怒りながら私に歯向かう寺坂くんに、吉田くんがまぁまぁとなだめる。
「頭では俺たちこいつに勝てねーから」
「数学者の娘ならな」
「そういうこと。だから早くどうにかしてね」
「ウッセーナ、ったく」
とかなんとか言いながらも、優しい寺坂くんはなんとかしてくれるのだろうと踏んでいる。
狭間さんの足元に転がってる玉もはけば、悪いわねと言われていえいえと返事をする。
とりあえず全員の席近くに転がってる玉をはけば、ちょうど授業の開始のベルが鳴り、私は自分の席に着いた。
「お疲れ様です、サチちゃん」
「あんがとね〜」
「もーめんどくさい」
愛美とカルマくんに労ってもらったのも束の間、その次の授業も、次の次の授業も、あの機械は発砲を止めようとしなかった。
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