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「まず問題は、殺せんせーが本当に泳げないのか。湿気が多いとふやけるのは前に見たよね」
「さっきも倉橋が水をかけたとこだけふやけてた」


プールから全員出て、密かに殺せんせーの暗殺会議を進める。


「もし仮に全身が水でふやけたら、死ぬまではいかなくても極端に動きが悪くなる可能性はかなり高い。

だからね、みんな、私の考える企画はこう」


クラス委員長であるメグが立ち上がり、全員の顔を見渡して言った。


「この夏の間、どこかのタイミングで殺せんせーを水中に引き込む。それ自体は殺す行為じゃないから、ナイフや銃よりは先生の防御反応も遅れるはず。そして、ふやけて動きが悪くなったところを、水中で待ち構えてた生徒がグサリ!!」


メグはそういうと、バレットに仕込んでいたという対先生用のナイフを見せた。


「おお〜昨年度水泳部クロール学年代表、片岡メグ選手の出番ってわけだ」


前原くんのその言葉に、私と愛美はぽかーんと口を開けた。

運動の苦手な私たち二人からしたらメグはとてもかっこいい。
さすがイケメグというあだ名が付いているだけあると思った。






「ジャーン」
「サチ!!」


とある朝、もう腫れも治まった頬を見せるために教室にいる莉桜の前に立つ。


「ほっぺ治ったの!?」
「うん、もう腫れも引いたし痛くないから湿布とってきたんだ。やっとプールに入れる〜」
「ずっと入りたいって言ってましたもんね」
「うん!!愛美と遊ぶ」
「はい!!」


原ちゃんにも良かったねーと言われて、今か今かとプールの時間を待っていれば、岡島が勢い良く扉を開けて叫んだ。


「おいみんな、来てくれ!!プールが大変だぞ!!」

その言葉に全員でプールに急いで行くと、見るも無残なぐちゃぐちゃに壊されたプール。
それにあぁ〜...と言いながらため息をつく私に、愛美は心配そうに見上げる。私は捨てられているゴミを拾って、それをじっと見た。


「ゴミまで捨てて...ひどい...」


それを見ながら愛美がぼそりと呟いた。
悲しそうな声で言う愛美をちらりと見てから、こういうことをやりそうな人物を頭に思い浮かべる。



寺坂くん以外いないだろう。


後ろにいる、ニヤニヤと笑っている寺坂くんを見つめる渚くんを見ていると、明らかに自分がやりましたというような態度で降りてくる寺坂くん。その後ろにはいつものメンバーである村松くんと吉田くんの二人もいたけれど、なんとなく乗り気じゃないのか顔が引きつっていた。

とことんこの人は、何かをやらないといけない性格でもしているらしい。



「新稲ちゃんさー寺坂のバカをちゃんと見ててよ」
「何で私が?」
「新稲ちゃんの相棒でしょー」
「寺坂くんが私の相棒?愛美でしょ」


カルマくん、杉野くん、渚くんの三人の後ろを歩いていれば、カルマくんがこっちを振り向きながらそう言ってきた。

隣に歩いている愛美は私の言った言葉に照れているのか少し顔が赤かった。


「寺坂と新稲が相棒...でもしっくりくるな...」


そう言った杉野くんに、ありえないと言えば、渚くんがこっちを意外そうに振り向いた。


「新稲さんと寺坂くん仲がいいから、てっきり...」
「...あんなままの寺坂くんじゃ、好きになれないよ。いつもは優しいんだけど、最近はなんかイライラしてるし」
「あいつを優しいと言えるのはお前ぐらいだよ、新稲」


呆れながらそういう杉野くん。
みんな、本当の寺坂くんを知らないからそういうんだ。

でも、本当の自分を見せようとしない寺坂くんにだって問題がある。

本当にあの人はめんどくさいというかなんというか。

私は誰にもバレないように小さくため息をついた。




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