3
あの後、寺坂くんの両腕に抱きかかえられて顔が真っ赤になった新稲さんを見て、これはもしかして?と思ったのは僕だけではないはずだ。
いち早く事態の異変に気付いて声を上げてくれた新稲さん。
あの時の冷静な判断やカルマくんとの共同の指示は本当に目の前の少女がしたことなのだろうかと不思議に思うくらい、新稲さんの顔はとても可愛らしい顔をしていた。
「あ?なんでお前そんな顔赤くなってんだよ」
「は、はぁ!?そういうこというかな!?」
「本当無神経だよな寺坂は。そんなんだから人の掌で転がされんだよ」
新稲さんと寺坂くんのやり取りを見ていたカルマくんが意地の悪そうな笑みを浮かべて寺坂くんを馬鹿にする。
すると、寺坂くんはカルマくんの服を引っ張って水の中へと引き込んで、二人の水中の攻防戦が繰り広げられた。
それを見て盛り上がるクラスのみんなに、呆れながらもそれを見守る新稲さんの元に走り寄って、心配そうに顔を覗き込む奥田さん、そして茶化そうとニヤニヤ笑ってる中村さんたち。
僕がそれを一人眺めていたら、いつの間にか後ろに来ていた殺せんせーが、たくさん水を吸収した触手を絞りながら口を開いた。
「寺坂くんは高いところから計画を練るのに向いていない。彼の良さは現場でこそ発揮されます。体力と実行力で自身も輝き、現場のみんなも輝かせる。実行部隊として成長が楽しみな暗殺者です。
今になればわかります。寺坂くんと新稲さんが、友好な関係を築いている理由が」
寺坂くんがかなり乱暴だけどクラスに馴染んできた。
そのことがカルマくんもクラスのみんなも僕も嬉しくて、多分一番嬉しいと思っているのは新稲さんだろう。
ずっと、なんだかんだ仲良くしていた寺坂くんがやっとクラスに馴染めて、若干の喧嘩まがいなことをしてまで、寺坂くんを変えようとしていたから。
やっぱり、この二人の関係は言葉に表すことのできないような関係になりつつあるんだなと、漠然とそう思ったのだ。
prev next
ALICE+