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夏休みが始まる。
A組との賭けも無事E組の勝利に終わったし、あとは殺せんせーの暗殺まで各々技術を磨くだけ。
「夏休みは遊ぼうね、愛美」
「もちろんです!!」
「勉強もしなきゃだけど、それはそれで今度やろう」
「そうですね、中学最後の夏休みでもあるわけですし」
最後の夏休み。その言葉に少し感慨深くなりながらも、いつもどおり愛美とお別れをして駅に向かって歩き出す。
前にいる図体の大きい後ろ姿は、私のよく知る彼で。思わず走り出して、彼のその背中へと突進をする。
「うお!?」
「一緒に帰ろ、寺坂くん」
最近、やっとクラスに馴染めてきた寺坂くん。
寺坂くんは私の顔を一瞥すると、オォ、と一言つぶやいて私の隣を歩き出す。
いつもは大きい歩幅も、私の歩幅に合わせてくれているのかゆっくり目だ。
「寺坂くん、夏休みは何か予定でもあるの?」
「あ?あのタコの暗殺以外は特にねーな」
「そっか。んじゃあ遊ぼうよ」
「遊ぶっつったって何すんだよ」
「んー夏祭り行ったりとか?あとは花火したりとか?」
「あー...奥田とすりゃいいじゃねーか、後中村とか原とか」
寺坂くんはよく知ってるなー。私が誰と仲がいいのか、なじむ前から私を知ってくれていたのだろうか?
少しそんなことを考えて口元を緩める。
「それはそれ、これはこれ」
「なんだそれ」
面白そうににかっと笑いながら話す寺坂くん。
頭一つ分以上は高いところにある彼の顔を見上げる。
前までのヤサグレたような顔じゃない。少年みたいな柔らかい笑みを浮かべていて。
「変わったね、寺坂くん」
「...あ?」
前はあんなに、絶対仲良くしようともしなかったし、笑い方もニヤリとした笑い方しかしなかった。
あとは大柄に見えるように体を大きく見せる威張った歩き方だったのに。
「...てめーのせいだな」
「え?」
寺坂くんはポッケに突っ込んでいた右手を取り出して、あーと言いながら自分の頭をグシャグシャとかき回す。
そして言いづらそうに口をモゴモゴと動かした後、ちらりと隣にいる私を見やった。
「だから、お前が...俺を変えようとしたからだろうがって」
言ってんだろ。
そう小さく言った寺坂くんの顔はほんのりと赤く染まっていて。
まさか彼がそんなことを言うとは思っていなかった私は、思わず自分のほっぺを両手で包んで、自身の熱を冷まさせようとする。
あ、いや別に私は顔が赤くなってるわけじゃないのか。
「...よ、かった...のかな?」
「よかっ...た...んじゃねーの?」
そっか。
おう。
そう一言言い合って、今度は静かに歩く私たち。
なぜだか高鳴る心臓に、どうか気づかないでと願いながら私たちは帰路を歩いた。
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