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目の前で警備員ごと携帯ショップを壊していくイトナくんを見やる。息切れが激しくて、体力を消耗してるように見えた。
ビルの陰に隠れながら動向を見守っていた皆とともに店の前に立つ。


「目の前に生徒がいるのだから...教えたくなるのが先生の本能です」


殺せんせーはどこから手にしたのか串に刺された肉を持ちながらイトナくんにそう言う。
すると、突然粉爆弾が投げられて、あたり一面白い粉だらけになった。

ゴホゴホと咳が止まらなくなる。
そっちに気を取られているうちに、今度はイトナくんが網に取られて車に引っ張られていなくなる。

それに気づいた殺せんせーが、慌ててイトナくんを助けるために飛び出した。


「...俺らを気にして回避反応が遅れたな」
「あんの白野郎〜...とことんコマにしてくれやがって...」


そういった寺坂くんだけじゃない、全員に怒りが満ちていた。
人間を、車で引っ張っていくその残虐さもさることながら、とことん鬼畜なシロに私も怒りが止まらない。


「新稲」
「新稲ちゃん」


寺坂くんとカルマくんに同時に名前を呼ばれた。
服についた粉を払っていた手を止めてふと顔を上げれば、二人だけじゃなく、全員が私を見つめていて。


「...指示を、新稲」


磯貝くんが前に一歩出て、一言そういった。








「右上、カルマくん前原くん!!下は三人体制で!!左上、寺坂くん二人一気に落として!!ひなた、さらにその右斜め上!!」


全員で殺せんせーの後を追っかける、道中布とガムテープを百均で買い占めて、声を張り上げて全員に指示をした。機動力の高い人たちは効率よく敵を地面に落としてくれて、私たち下にいる側の人間で上手に敵をキャッチして簀巻きにしていく。

予想通りだった。イトナくんを追っかけていった殺せんせーを待ち構えるかのように、きっと大人数の敵が狙っていると思った。

全員を簀巻きにして動けなくした上で、殺せんせーはシロに向かって触手を突き出す。


「去りなさい、シロさん。イトナくんはこちらで引き取ります。あなたはいつも周到な計画を練りますが、生徒たちを巻き込めばその計画は台無しになる。当たり前のことに早く気づいた方がいい」


シロはしばし考えたのち、見直しておくことにするといったはいいものの、イトナくんを放置して車を出していった。
こんな状態のイトナくんを放っとくなんて...。


とりあえずなんとか触手を切り離そうとすれば、殺せんせーは触手というのは意志の強さで動かすものだ、といった。


「そのためにはそうなった原因をもっと知らねばなりません」


そうはいっても、イトナくんの身の上話なんてわからないし。皆で途方に暮れていると、不意に携帯を鳴らした不破ちゃんが、その画面をみせてくれた。


「気になってたんだ、どうしてイトナくんは携帯ショツプを襲ったのか。で、さっきまで律と何度かやりとりしてたんだ。機種とか戸籍とか彼につながるものを調べてもらって、そしたら、堀部イトナってここの社長の子供だった」


画面には、堀部電子製作所という工場のホームページが載っていた。
世界的にスマホの部品を提供していた町工場だったけど、負債を抱えて倒産し、社長夫婦は子供を残して雲隠れ。

なんとなく、わかってしまった。イトナくんが力や勝利を欲しがっていた理由が。

私は携帯を握りしめて、眠っているイトナくんを見つめる。
すると、寺坂くんが耳をかきながらつまんねーと声を発した。


「寺坂くん!!」


少しいさめようと声を出せば、彼は小指に息を吹きかけて、村松くんと吉田くんの肩に手をポンと置いた。


「皆それぞれ悩みあんだよ。軽い重いはあんだろーがよ。けどそんな悩みとか苦労とか割とどーでもよくなったりすんだわ」


寺坂くんはポケットに手を突っ込むと、イトナくんの首根っこを掴み無理やり立たせる。


「俺らんとこでこいつの面倒見させろや。それで死んだらそこまでだろ」



と、そう言った。

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