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今日は愛美はいないし。原ちゃんも莉桜も、さっき駅でお別れをした。
なんだかこのまま一人で家に帰る気になれなくて。
ぼーっとしながら公園で一人、ブランコに乗っていた。
「...何やってんだ?お前」
突然聞こえた声に顔を上げると、そこにいたのは寺坂くんだった。
「...寺坂くんこそ、どうしたの?」
寺坂くんは暗殺にも勉強にも積極的じゃない人間だ。
クラスの中でも、あまり馴染めてない方の人間だけど、たまに話すといい人だというのがわかる。なんだかんだ優しいし、悪になりきれていない、と言う感じが見て取れるのだ。
「俺は家に帰る途中。お前、奥田は?」
「愛美は今日殺せんせーと秘密の特訓」
「あのタコか...」
寺坂くんは基本的にあの先生を良く思っていない。まぁそれはわかるっちゃわかるんだけど。私も良く先生のことは理解してないし。
なんか知らないけど暗殺させられてるって感じだもんね。どうしろってんだよ、っていう気持ちもわからんでも無い。
「寺坂くんはどうして、殺せんせーやみんなと馴染もうとしないの?」
「...必要ねーだろ」
「必要?」
「お前らと俺が、馴染む意味なんてねーだろ」
カバンを肩から下げながら、私を見下ろす寺坂くん。私はじっと彼の目を見つめて、そうは思わないけれど、と言おうとした。
それでも言えなかったのは、私が彼にとやかくいう権利はないと感じたから。
私に人の心理を汲み取る力はない。土足で踏み入る度胸だってない。
「もうそろそろ帰んねーと親心配すんじゃねーの?」
「どうだろうね」
「あ?」
心配も何も、家に帰ったってどうせ一人だ。別に嫌いなわけじゃ無い。寂しいとは思うけど、だけどどうせ、一人なのだ。
「...何でも〜寺坂くんこそ、帰んないの?」
「...うっせーよ」
彼は、うるさいやら何やらと言いながらも私ときちんと話をしてくれる人だ。ブランコに乗ったまま漕ぎ続けてる私を見ながら、寺坂くんはチッと一つ舌打ちをこぼす。
「...帰るんなら駅まで送るぞ」
「...優しいね!!」
「うっせー」
あぁ、うっせー。
何回もそう言いながら、私がブランコから降りるのを待ち、そして駅の方面に歩く彼の背中を追いかける。
何というか、彼はツンデレなのだと思う。本当は優しいくせに。その優しさを表に出さない不器用な人。
翌日、愛美が先生と一緒に作ったという毒薬は実は先生の効能を上げるものだったそうで。
化学以外はあまり成績の良くない愛美のために、先生が一芝居打ってくれたものだったらしい。
「君の理科の才能は将来みんなの役に立てます。それを多くの人にわかりやすく伝えるために...毒を渡す国語力も鍛えてください」
その言葉は、愛美だけじゃなくて、私の心も深く突き刺さった。
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