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進路相談を終えた次の日、渚の母親が三者面談をすると言ったらしく、クラス全員で担任役を誰にするかと論議を交わしていた。

まぁ実際、烏間の先公がいないからあのタコ野郎がどうにかするしかないわけだが。

がやがやしてる教室の中、いつもなら一緒に盛り上がるだろう新稲が、一人おとなしく窓の向こう側を見つめていた。俺はその後ろ姿に近づく。


「どーした」
「寺坂くん…」


新稲は、頬杖をついたままこっちを見上げて、なんとも言えない笑顔を浮かべてまた窓に視線を移した。


「寺坂くん、将来決めた?」
「あ?」


昨日の進路相談を思い出す。自分の番が来たから教員室に行ったら、カルマの野郎に大臣になれ、と言われた。それを新稲に伝えれば、新稲は少し目を見開くて笑いながら俺の腕をバシバシと叩いた。


「…んだよ」
「ううん…そっかー…うん、なんか似合ってるね」
「本当に思ってんのかそれ」
「思ってるよー酷いなー」


未だにクスクス笑いながら、俺を見上げる新稲の頭を撫でる。少し驚いたように目を開いた新稲に、ただ、元気がなさそうで心配だったと。素直にそう言ってしまった俺の心境の変化は、一体なんだろうか。


「…少しは、元気出たか」
「え…?」
「なんか悩みでもあんのか?」


以前、泣きながら言っていた『寂しい』と言う言葉。あれから何も進展はせずに、新稲は今まで普通に過ごしていた。


「…うん、元気出た」


でも、心配したって、何も言わないこいつに何ができるかと聞かれても。
俺は多分こいつの頭を撫でてその心配を少しでも拭ってやることしか出来ないのだろう。
少し笑いながら俺の目を見つめる新稲に、俺は呆れたようにふっと笑えば、前の方で騒いでいた奴らがこっちに気づいて声をあげた。


「おい寺坂、新稲、イチャイチャは後でしてこっちにきて手伝えよ!」
「あ!?」


イチャイチャなんてしてねー!そう言おうと振り向けば、なぜか烏間に扮したタコ野郎の足を教壇の中に押し込んでる男子たち。それを呆然と見ていれば、新稲が俺の背中をバシッと叩いて「寺坂くんの出番だよ」と笑顔で言った。


「何が出番だ」


それでも、まぁ頼られてるのなら断るわけにもいかない。俺はやれやらと首を横に振って、前の方へと向かった。もちろん、新稲の手を引っ張って。



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