「ヨル、幻影旅団って知ってるだろ?」
「まぁ、有名ですし...え?」

仕事をしている間にシャルのやつがヨルに迫っていたとは。うかつだった。本当にこいつらめんどくさい。
仕事に集中してると周りが見えなくなるのは俺の悪いところではある。慌てて下に降りれば、シャルにこれでもかというぐらい顔を近づけられてるヨルに、あー可哀想に、と心の中で思った。

「お察しの通り、俺は幻影旅団のメンバーだよ」

目の前に座ってる男はえせ笑いを見せてヨルに笑いかける。俺の隣で固まったようにシャルを見てるヨルの肩をトントンと叩くことで、力を抜かせる。

「...その旅団の方がどうして?」
「昔、俺は流星街にいたって事は教えたな?」
「はい」
「その時、こいつらと一緒に俺はつるんでたんだよ。だから、昔なじみってやつだ」
「なるほど」
「で、この男、シャルナークはその旅団の中でも一番頭の切れるやつだ」

情報収集ならヨルも負けないが、まだまだヨルは未熟だ。だから、味方にできる奴が少しでもいるならつけたほうがいい。

「お前の欲しい情報、こいつにも託してやれ、ヨル」
「...は?」

ヨルは信じられないといった目で俺を見る。
俺は一度ヨルから目を離し、前にいるシャルの目に自分の目を合わせた。

「シャル」
「ん?話見えないんだけど」
「こいつが欲しい情報は、俺でも中々手に入んないんだ」
「...ふーん?」
「お前にもその情報を探す手伝いしてほしいんだよ」
「見返りは?」
「今後の情報の報酬は2割引だ」
「3割」
「...しゃーねーな...何か良い情報があれは3割引にしてやる」
「なるほどね...で、どんな情報が欲しいのさ?」

俺の商法をぼったくりと言う割には、こいつらだって十分強引な商法しやがるじゃねーか。はぁ、とため息をついて、俺は隣に座るヨルの名前を呼んだ。

「ヨル」
「本気ですか?」
「味方につけたら一番強力な助っ人だ」
「ま、立派な犯罪者だけどね、俺達」

そういってヨルを怖がらせたいのだろうけど、残念ながらうちの弟子はそんな事で怖がるようなやつじゃない。もっと図太い神経で生きてんだ。

「...助けてくれるのであれば、協力を拝まないわけにはいかないですし」
「エールでも難しい情報なんて、あるんだね」
「ヨルから聞け」

シャルは早く早くといった顔でこっちをみる。ヨルはため息をつきながら、口を開いた。

「私は、異世界から来た人間なんです」
「....はぁ?」

だよな。俺も最初はそんな反応だった。

「家に帰ろうと思って歩いていたら、何者かに背中をさされまして。血だらけになって死んだと思ってたんですけど、エールさんに救ってもらい、気づいたら全く違う場所にいました」
「最初こいつを見た時、かなりの瀕死状態だったんだよ」
「で、何を根拠に異世界から来たって?」

俺は少しため息をついて、ヨルに紙を渡す。ペンを持たせて、文字をかけ、と一言告げる。

「これがこいつの元居た世界の言語だ」

そう言ってみせた文字の羅列を覗き込んだシャルも、少なからず驚いているようだ。息を呑む音が聞こえた。

「俺は基本的にどんな言語でも分かるつもりだ。でも、こいつの書いた言語は知らないし、どんな奴でも知ってる公用語のハンター語を知らなかった」
「他は?」
「念を知らないのに俺の店の前にいた」
「...んー...それが一番強力な理由だね...」

この世界では、念を知らないのに裏の世界で生きて行く事はよっぽどじゃないかぎり信じる事はできない。

こんな一般人で、念も流しっ放しで、しかも血だらけの状態で俺の店の前に居る事は絶対にありえない事なんだ。

「それが異世界かどうかは分からないけれど、つまりここは元居た場所じゃないってことだね?」
「はい、そうです」
「なるほど...」

そういうと、シャルは少し考えるように手を組み始める。
クロロに話すべきか否かを考えているのだろう。
すると、店の外に見知った気配を感じ取った。


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