どうぞご自由にお触り下さい

「こ、小鞠くん?もう...いい加減その手をどうにかしてくれないかな?」


一つ年下の彼氏、小鞠くんはニクフェチだ。それは男女問わず。なんか...他所の学校の子のニクに触ってきてご機嫌で帰ってきたこともあった。あの子ほんと何してんの...。迷惑かけたりしなかったかなぁ。


そんな具合に、とんだ変態彼氏だけど、中学時代から陸上で鍛えあげられている太腿を綺麗だって言われて以来、私はそんな変態でも小鞠くんのことが大好きだ。こんな太腿ばきばきな女の子を綺麗だなんて言ってくれるイケメン、他にいる?いないよね?そんなもん、好きになるに決まってるじゃないか。


「はぁ...癒される...名前さんの太腿」


そして部活のない日は、うちに来て太腿を散々ぱら撫で回していく。そりゃもう毎度のこと、悦に浸った表情で。


そして今日も...


いつも通り、私の太腿に頬擦りしたり優しく上下に摩ったり。うわあ、すっごいうっとりしてるよ...。本当、変態だなぁ小鞠くん。でも、顔がいいから様になるって言うか、なんと言うか。口開かなければ艶っぽいイイ男なんだよねえ。現在進行形で太腿撫で回されてハァハァされてるのに、それに色気を感じてしまう私も大概変態だなぁ。


静かな部屋に二人きり。イケメン年下彼氏に太腿を撫で回される彼女。何が起こってもおかしくないこの状況。ああ、それなのに...


「女性でこのニクは中々いないですよ、名前さん」
「それ、褒め言葉と受け取っていいんだよねぇ?」


特にそういう展開にならず。小鞠くん、実は男の方が好きとかないよね?他所の学校の男の子触って来てそっちに目覚めました!とかもないよね?
不安な気持ちになりつつも、与えられる太腿への絶妙な刺激に.....何かちょっとムラムラしてきた。乙女がムラムラなんてと思いつつ、乙女も人間なのだから発情だってする訳ですよ。そりゃ...彼氏にハァハァ言われながらも太腿撫で回されたら...ねえ?


「うぅ...」
「おや、名前さん?あまり太腿を閉じられると撫でにくいのですが...」
「小鞠くんはさぁ、女の子の...彼女の太腿撫で回してて欲情とか発情とかしないわけ? 」
「しませんけど」


ズバッと切られた気分!あぁ!そうですか!私はあなたにとってスクイーズと同じなんですね!スクイーズ気持ちいいもんね!ぷにぷにもにゅもにゅ癒されるもんね!
悲しい気持ちになってたのも束の間。何かを察してくれたらしく、太腿を撫で回してた小鞠君の手が私の頬に触れる。


「名前さんは、したんですか?」


ぐいっと太腿にくっついていた小鞠くんの顔が私に近づく。悟られたくなくて、思わず横を向く。


「.....してないっ」


けれど、小鞠くんはお構い無しだ。横を向いた私の顔を、またぐいっと元に戻す。


「太腿触られて、その気になったんですか?」


近い近い近い!


「なってないっ!」


両手で近付く顔を遠ざけようとしけれど、その両手は虚しく捕えられて身動き不能の状態にされてしまった。じーっと小鞠くんの視線が私に突き刺さる。見るな、私を見るな!!


「も...見ないで!」
「ちょっと失礼」


何言っても完璧無視の小鞠くんが、私のスカートの中に手を突っ込んだ。


「え!?ちょ、小鞠さん!?」


有無を言わさず小鞠くんの手が...私の...下着に...!!彼の手が終着点についたかと思ったら耳元で「名前さんの嘘つき」なんて言って簡単に私を押し倒した。こここ小鞠さん!?女の子にもちゃんと興味あったんですね!?


「ま、待って!そんな、いきなり」
「こちらはこんなに正直なのに...」


くすっと色っぽく微笑んで、スカートの中の小鞠くんの手がもぞもぞと動く。


「ひゃっ...や、あの...欲情とか発情とかしないって...」
「僕だって人間ですから、状況に応じて気くらい変わりますよ」


もう片方の手で、ボタンに手をかける小鞠くんが、顔をあげてニコリと笑う。


「...それに、名前さんはこういう事されるの期待してたんじゃないですか?」


いつの間にか、着ていたブラウスは肩にかかるだけの状態になっていた。


スクイーズじゃなくて、女の子として、彼女として見られたい。触ってるのにムラムラ来ないなんて、本当に私のこと好きなの?実は男の子が好きとかじゃないの?


なんて、心配していた数十分前の私に説教したい。


淡々としているようで余裕のない吐息が耳にかかる度に、簡単に安心してしまうのだから。
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