鬼は夜に活動する。よって鬼殺隊の活動も主に夜だ。任務が終わって藤の花の家紋の家に着くころには明け方ということも珍しくない。
それはたとえ、1年の終わりを告げる日だろうが関係ない。鬼に年末年始はないのだから。
もちろん私も例外ではなかった。
ようやく到着すると、そこには良く知った顔があった。
「あ、なまえ」
「善逸。おつかれー。善逸も任務だったの?」
「そうだよー。もう気付いたら年越しちゃったよー」
「あはは、本当だねぇ」
少し言葉を交わして、ひとまず汚れた身体を洗うために湯浴みに向かった。
気が付いたら新年、というのは確かに情緒も何もないが、こうやって鬼狩りなんてやってる身としては、新年最初に見た顔が恋人だったというのは、かなり幸運だったのではないかと思う。
湯浴みから戻ると、部屋には食事が2膳用意されていた。おそらくもう1つは善逸のものだろう。
そこには、正月だからか、お雑煮が置かれていた。
こうやって、少しでも季節を感じられる気遣いがとても嬉しい。
座ると、ちょうど善逸も部屋に入ってきた。
「あ、お雑煮じゃん!やった!」
そう言って嬉しそうに座る。
早く食べたいところだけど、その前にやらないといけないことがある。
「善逸」
「ん?なに?」
「明けましておめでとう。今年もよろしくね」
正座して、手を付いて挨拶をすると、善逸も、そうだった!と慌てて正座した。
「明けましておめでとう、なまえ。こちらこそ、今年もよろしく」
二人で笑い合って、ようやく、いただきます、と食事に手を付けた。
お雑煮は具だくさんで、出汁とお味噌の風味がしっかりして、疲れた身体に染みわたってくる。
おいしいね、と言いながら早々に平らげてしまった。
少し休憩していると、ぽかぽかした日差しが入ってきて眠気を誘う。
これだけ見ていると、とても平和に思えてくるのに、実際はそうではないなんて、とてももどかしくなってくる。
「今年こそは、鬼舞辻を倒して、鬼のいない平和な世の中にしたいね」
「そうだね」
「あと、善逸とも、今年も仲良しでいたいな」
そう言って、ちらりと善逸の方を見ると、なまえ・・・、と呟いて顔を赤くしていた。
そして急に突撃してきて、ぎゅうっと私を抱きしめた。
「もちろんだよぉぉぉぉぉ!!!今年だけじゃなくて、ずぅぅぅぅぅっと仲良しでいようねぇぇぇぇぇぇ!!!」
「わ、わかったから!く、くるしい・・・」
やっとのことで体を離すと、ぱちっと善逸と目が合った。
それを合図にどちらからでもなく、口付ける。1度だけでなく、何度も。
唇を離したときには、息が上がっていて、2人とも顔が紅潮していた。
あ、ヤバい、かも。
気付いたときには、善逸の瞳があきらかに熱を帯びているのが分かった。
なんとか抜け出さなければと考えているうちに、あっという間に畳の上に倒されてしまった。
「ちょ、ぜ、善逸・・・」
あわあわしている私を余所に、善逸の手がさらりと頬を撫でた。
ああ、もう完全に男の顔になってしまった。
頬、髪、首筋と、あらゆるところを撫でた後、耳に唇を寄せてきた。
「姫始め、しとく?」
「っ!!ばっかじゃないの!!?」
いつもより低めの声に、反論してみたものの、結局はそのまま陥落してしまうのだ。
嬉しそうに口付ける善逸に、諦めた私は彼の背中に手を回した。
配布元「確かに恋だった」