廊下を歩いていると、1年生たちが話しているを見付けた。
向こうもこちらに気付いたらしく、そのうちの1人、野薔薇が猛ダッシュでこちらへ向かってきた。
「なまえさん!この前はありがとうございました!」
びっくりするくらい綺麗な礼をされて若干引いたけど、すぐに何のことか分かった。
「ああ、こっちこそ楽しかったよ。女子高生と買い物なんて、そう出来るもんでもないしね」
「え、なに?釘崎、なまえさんと買い物行ったの?」
後から追いついてきた虎杖くんが聞く。
「そう!しかもなまえさんのバイクの後ろに乗っけてもらって。めっちゃカッコ良かった!」
「えー野薔薇、なまえのバイクの後ろ乗ったの?うらやまー」
隣に立っていた悟が、私の頭に顎を乗せて不満そうな声を出す。
この身長差が恨めしい・・・。
「なまえさん車だけじゃなくてバイクも乗んの?すっげー!」
「そうだよー。なまえはね、高専卒業してから3年普通に社会人してたんだけど、戻ってきたら大型バイクの免許取ってて」
「え、なまえさんそんな経歴持ってるんですか?」
「そうそう。いやー、カッコよかったなぁ。高専に戻ってきたときのなまえ。颯爽とバイクに乗って”ただいま”って。思い出しただけでテンション上がるー!」
「いや、なんでアンタが私の経歴語ってんの」
横にいる私を無視してペラペラと勝手に人のことを話すこの男には、デリカシーという言葉は通じないのか。いや、通じないんだろうな。
悟の話を聞いて、1年生たちは、すげー、とか、かっこいい、とか言っている。
まあ、そんな風に言ってもらって悪い気はいないけど。
「え、っていうか先生は後ろ乗ったことないの?」
ふと思い出したように、虎杖くんが悟に聞く。
「そうなんだよ悠二〜。頑なに乗せてくれないんだよねー」
「アンタを後ろに乗せたら、悪い予感しかしないから絶対イヤ」
「あー、後ろからセクハラとかしそうだもんね」
「なまえも野薔薇もひっど!」
悟がオーバーリアクションで肩を落とす。
生徒にこんな扱いされて、どんな教師だ。
「まぁ、アンタが任務で瀕死になったら乗せて運んであげるわよ」
「うっそホント?」
「いや、っていうか瀕死の状態でバイクの後ろ乗れんの?」
「バカね。暗に、一生乗せない、って言ってるのと同じでしょ」
「さすが野薔薇、大正解」
「みんなさ、僕の扱いひどくなーい?」
後ろで悟の情けない声がしたけど、盛大に無視して、その後しばらく若者たちとの会話を楽しんだ。