ニートの幼なじみがついに家を出たらしい。潰れかけた老舗の店番をしていると、幼なじみの母親が長年の持病が消え失せたがごとく清々しい顔をしてそう報告してきた。
「あのプー太郎が調教師かぁ」
一通り話したあと満足した彼女はスキップをしながら帰ってしまった。うーん、うちの商品は何も買っていかなかった残念。
この世界には人型の男の子のようなモンスターがいる。何を言ってるのか私も最初は分からなかったが、実際に彼らおすモンの姿を目の当たりにしてから受け入れざるを得なかったのである。人間は順応する生き物で私もご多分に漏れずいつの間にか日常の一部として彼らを受け入れていた。
調教師はおすモンを首輪で捕まえて戦わせたり、仕事をさせたりなど使役ができるらしい。そういえばうちの近所にも弟子を募集している調教師がいたなあ。
ぼんやりとした薄い知識を頭の中でくるくる回していると、店の扉が開き調子外れの来客チャイムが鳴った。
「おっす、プー太郎卒業おめでとう」
「……」
来客は昔から無口のプー太郎改め今や調教師の幼なじみだ。彼は私の軽口に視線だけ寄越し、そのまま見慣れているであろう店の棚へと目を向ける。うろうろと店を徘徊し始めた彼の後ろには赤髪の男の子がついてきていた。
「その子が君のおすモン?」
そう聞くと幼なじみはこくりと頷き、赤髪のおすモンに私の前へ出るように促す。おずおずとこちらを見るおすモンはイオームと名乗り、握手を求めると火傷するぜと断られてしまった。このくらいの年の子?はキザなことが言いたくなるのかもしれない。そんな生ぬるい目で見ていると、炎を扱うおすモンだからと顔を赤らめながら弁解してきた。
「そだ、餞別あげるよ」
テーブルに置いてあったクッキーを適当にラップで包み幼なじみに渡す。昨日酒を飲みながら千鳥足で作ったクッキーだ。何が入っているのかすら覚えていないので味の保証はしない。
「……ありがと」
相変わらず幸の薄そうな幼なじみが少しだけ口角を上げてみせるのを見てイオームが目を丸くしていた。
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