ひょこひょこと足をかばいながら、私は目的地を目指して歩いていた。
「あれ、お嬢ちゃん?」
その声に後ろを振り向くと、自転車に乗った人物が私に近づいてきていた。
友人の近藤だ。
「どこ行くの?」
「病院。足、くじいちゃって」
ほら、と包帯を巻いた右足を見せれば近藤はうわぁと痛そうな表情を浮かべた。
痛いのは私なんだけど。
「もしかして、病院までこのまま歩いて行く気だったの!?」
こくりとうなずけばありえないといった顔をこちらに向けてくる。
「駄目だ!余計に悪化するぞ!自転車に乗りなさい!」
お前は私の母親か。
「その自転車くれるの?ありがとー」
そう冗談を言えば近藤はなんの躊躇いもなく私に自転車を渡そうとしてきた。
「え、ちょっごめん!ウソウソ。大丈夫だって、歩けるから」
胸の前で両手をぶんぶんと振るが、近藤は駄目だと自転車を近付けてくる。
こいつはいつでも、誰に対しても優しいんだな。
「ほら、足痛いから漕げないし」
「そう言えばそうか」
やっと納得したのか、近藤は私に自転車を押し付けるのを辞めた。
「じゃあ、後ろに乗って」
「え、いや、大丈夫だって!」
まさかの申し出に驚いた。
「大丈夫じゃないでしょ!無理しちゃいかん!」
「私、重いし!」
「ははは、お嬢ちゃんくらいなら余裕で抱き上げられるくらいだ」
爽やかにそう笑う近藤にドキリとする。
実際にそうされたわけでもないのに何故か無性に恥ずかしい。
「あ、もしかして俺と二人乗りが嫌だったりする!?」
「そんな事ないって!」
思っていた以上の大声が出てしまい、自分自身驚いてしまった。
「じゃあ後ろに乗って」
先に自転車に乗った近藤が、私の目の前に荷台が来るように自転車を進めてきた。
「でも、そんなの悪いよ…」
「女の子は、素直に男に甘えればいいんだよ」
そう言って近藤は私に笑顔を向けた。
女の子。
そう言われた事が照れくさいのか、いつもと同じ近藤の笑顔が違って見えた。
「ほら、乗って」
そう言われて、おずおずと荷台を跨いで腰を下ろした。
見慣れたはずの近藤の大きな背中にドキドキする。
制服のスカートがめくれてしまっていないか、汗臭くは無いか、髪の毛は乱れていないか、いつもは気にしない事まで気になって落ち着かない。
「ちゃんと乗ったな?じゃあ出発するぞ」
ぐんと走り出した勢いでバランスを崩しかけてしまい、思わず彼の制服のシャツを握りしめてしまった。
さっきまでの足の痛みなどどこかへ行ってしまった。
その代わりにばくばくとうるさい心臓と体中の熱さを感じる。
このまま目的地につかなければいいのに。
そう思った時、彼に対する感情が友人に抱くそれとは違うものだということに気付いてしまった。
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