彼氏の退はいわゆる地味なタイプだ。
出会ったきっかけも飲み会で、特に目立つわけでもなく笑いながら周りに気を使ってるだけだし、地味な奴だなぁって思った。
告白された時も別に嫌いでは無いし、次の彼氏までの繋ぎ程度にしか考えていなかったのが正直な話。
しかし付き合ってみれば案外心地いい。
いつもにこにこと私に接してくれる。
デートや楽しい時はもちろん、私がわがままを言っても、怒っていてもそれ程顔色を変えることなく包み込んでくる。
何だかそれが悔しい。
確かに彼は年上だが、私も子供では無い。
どうにか彼から一本取ってやりたい。焦る彼を見たい。
その思いで彼を押し倒してみた。
おそらく童貞であろう彼なら慌てた表情か照れた表情が見られると思ったのだ。
思った通り、いつものにこにこと優しい笑顔は隠れ、きょとんとした表情で私を見つめていた。
やった!
しかし優越感を覚えたのは一瞬だった。
何故なら彼がニヤリと笑い、こう言ったのだ。
「ああ、こういう事がしたいの?」
一瞬の間に視界は回転し、2人の位置は逆転し、私の目の前には見た事ない雄の顔をした退がいた。
ああ…彼には敵わない。
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