テスト


「私はね、鬼と仲良くしたいんです」

その言葉を初めて耳にした夜の月も、今夜のようにそれはそれは美しい満月だった。

「人と鬼が仲睦まじく手を取り合って、共存出来る日がきっと来る。…私の大切な姉は、そう信じて疑いませんでした」

知っている。|嘗《かつ》てこの心を捧げた彼女が、心から願ったその信念を。忘れた事など、一度も無かった。
今、隣に座る同胞もまた、俺と同じように彼女の亡霊に囚われているのだ。彼女が繰り返し描いた儚い未来。それを叶える事など、到底不可能であると頭では分かっていながらも──心の奥底で|燻《くすぶ》る小さな蛍火のように、決して触れられない温もりに縋り付く事で己を律しながら必死に背筋を伸ばしている。吹き荒ぶ風に足を掬われないように。歩みを止める事なく、進み続けなければならないのだ。
それは、俺達にとっての呪いだった。

「だから、私はその意思を継ぎたい。姉が好きだと言ってくれた笑顔を絶やす事なく、志半ばで散ってしまったあの人の追悼のためにも。…なんて、少し喋りすぎてしまいましたね。すみません」


嗚呼、随分と酷い話だな。
今際の際に思い出すのが、よりにもよって泣き顔とは。

「────ッッ煉獄さん!!!!」