イケメン妖怪VSシスコン
※アニメネタ
「とりあえず、ありがとうキュウビ、イケメン犬!おかげで俺も読モデビューできたよ〜!」
「良かったですねえ、ケータくん!」
「礼には及びません。このイケメン妖怪キュウビ様がいたのですから当然ですよ!」
「いーや!ミーがいたからさ!何て言ったってイケメン妖怪はこのミー!だからね!」
クマとカンチが読モに選ばれた。それを羨ましく思った景太は、自らも読モになるべく、キュウビとイケメン犬の指導を受けていた。本当にこれ大丈夫なのかと思うところも多々あったが、結果、確かに読モに選ばれたのだから、彼らの指導は正しかったのだろう。
これで俺も女子たちにモテるに違いない!
教室で持て囃される自分を想像して、つい顔が緩んでしまう。
それと同時に腕のなかにいた子猫のこと思い出すと、頭を撫でて「君もありがとう」と、そっと下ろしてやった。猫は一度にゃあと鳴き、すぐにどこかへとかけていく。親元に帰るのか、それともそのまま旅に出るのか。行く末はわからないが、達者でな…と思う。キュウビとイケメン犬の指導を一緒に受けたゆえの仲間意識のせいなのかも知れなかった。
「あれ、ケータ何やってるの?」
「あ!姉ちゃん!」
しみじみ今日のハイライトを思い起こしていると、後ろから声が聞こえた。振りかえれば、自身が慕ってやまない姉がいる。「七海さんがひょうたん池にいるなんて珍しいでうぃすね〜」ウィスパーが何か言ったような気がしたが無視だ。
だって、目の前に姉ちゃんがいる、何より先に抱きつかないわけがないでしょ!
「おわっ!危ないよケータ…」
「へへ、ごめーん!ところで姉ちゃん、学校は?もう終わったの?」
自分よりも背の高い彼女を見上げれば、そこに優しい眼差しが落ちてくる。「うん、今日は早かったんだ。ちょっと博物館に用があってね、ここにきたんだけど…」一度言葉をきって、頭に手がおかれた。
「そこでケータを見つけたんだよ」と微笑む七海は、優しい、最高の姉だ。景太はぐりぐりと頭を擦り付ける。姉ちゃんいい匂いがする。癒される〜。
一方、その様子を見ていたキュウビとイケメン犬は、あんぐりと開いた口が塞がらなかった。何なんだ。目の前で起きているこのほんわかオーラは何なんだ。
「ちょちょちょっと!そこの美しいお嬢さんは誰なのです?!」
「ケータくんはお姉さんと呼んでいたけれど、もしかして…?」
「七海さんはケータくんの正真正銘のお姉さんなのでうぃす」
「なあにぃー?!」
どこか誇らしげに胸を張るウィスパーに、キュウビもイケメン犬も声をあげた。まさか「あの」景太に、こんな魅力的な姉がいるとは。しかも、なんだかとてもいい匂いがする。これは落とさない訳にはいかない。
イケメン妖怪対決、再び!
ギッと互いを睨む。
先に動いたのはキュウビだった。さっと手鏡を取り出し、きらりと決め顔を確認する。それから手櫛で頭部を一撫で。よし、今日も間違いなくイケメンだ。先手必勝!!まずは名前を聞いて仲良くなるのだ!
「オッホン!そこのお嬢さん?お名前を伺っても?」
「はい?」
ところが、キュウビの呼び掛けに振り向いた七海は、「え?キュウビ?」と首を傾げた。なんと!彼女はボクのことを知っている?!
しかし、これで怯んではならない。なぜならこのキュウビが有名なのは当たり前だからだ。むしろ知っているならば話が早い。
「…はじめまして麗しきお方。私の名前をご存知とは至極光栄です」
さっと手をとって跪く。キラリ、と上目使いで微笑めば、「何か雰囲気変わったね…?」という苦笑が返ってきた。これにはさすがのキュウビも、驚きを隠せざるおえなかった。
どこかで会ったことがあっただろうか。
こんな魅力的な女性なら、一度会えば忘れないはずなのだが…。
「ちょっとキュウビ!いつまで姉ちゃんの手を握ってるつもり?」
「え?」
手を握ったまま悶々としていると、ぎらり、と白い目が突き刺さった。正体は言わずもがな、彼女にいまだ抱きついている景太である。ドスッとその手に手刀を落とし、睨み付けてくる。すごく痛い。
先程までの穏やかさから一転、景太はまさに修羅の形相だ。「あーあ。また始まりましたねえ」ウィスパーが一人ごちた。
そして、その隙を逃すイケメン犬ではなかった。固まっているキュウビを押し退けると、「やあ!なんてキュートなガール!ミーはイケメン犬さ!よろしく!」と爽やかスマイルを向ける。
「は、はあ…」
「まさかこんなに素敵なガールに会えるなんて、今日のミーはなんてワンダホー!」
このイケメン犬に、落とせないガールはいない!キュウビになんて負けていられない!
七海のハートをゲットすべく、キラキラした笑みを向けたイケメン犬だったが、すぐに目の前にさっと影が走った。はっと見上げれば、そこには七海に抱きついていた景太が、いつのまにか仁王立ちで構えている。
そのあまりの迫力に、イケメン犬は固まった。
修羅だ。修羅がここにいる。
「え、えーと…と、とりあえずよろしく、ガール」
「はは…うん、よろしくね」
言葉を発しようとしても、ギン!と強く睨み付けられて、イケメン犬はもう黙らざるをえなかった。
これは、手を出し手はいけないやつだ。
後ろで苦笑している七海を見る限り、きっと景太のこの行動は日常茶飯事なのだろう。
そして案の定、そのいたたまれない空気に、助け船を出したのは、他でもない七海で。
「え、えーと!ケータ?とりあえず、私そろそろ行くね」
「え?!もう?!」
ぱっと姉を振り返った景太は、既に修羅の顔をしていなかった。「学校の課題終わらせるのに早く博物館行かないといけないからさ」という七海に対して、「俺も一緒に行っていい?」と甘えた声を出している。
七海も、景太が何を言うかわかっていたのだろう。すぐに「いいよ」と頷き、いまだに固まるイケメン犬とキュウビに、少々申し訳なさげに頭を下げた。その仕草は場慣れしている。
一方、景太は既にイケメン犬たちのことは眼中になく、七海の腕に自分の腕を絡ませていた。そしてそのまま歩き出したのだが。
「あ、姉ちゃんちょっと待ってて!」
七海から腕を抜き、駆け寄ってきた景太が、イケメン犬とキュウビに、鋭い目を向けた。それから、七海に聞こえないように一言。
「俺の姉ちゃんに手を出したら承知しないからね」
もう二度と七海に絡むのはやめようと思ったキュウビとイケメン犬なのだった。