ようこそゲラゲランドヘ!
「え?遊園地?」
「ああ。そうだ。七海、一緒に行かないか?」
バイト帰り、いつものようにオロチのお迎えで家に向かっていると、唐突にそんな話が出た。
突然のことに驚いて固まっていると、どうやら勘違いをさせてしまったらしい。「嫌か?」と聞かれて、慌てて首を横に振った。
「ううん!違うの、ビックリしちゃって…」
「俺が遊園地に誘ったのが意外だったのか?」
「うん、何というか…そういうの興味がないのかなあって」
オロチは普段からクールだから、遊園地に遊びに行くイメージがわかないのだ。今も必死にイメージしてみるが、辛うじて想像できたのは無言でジェットコースターに乗るオロチの姿である。…うん、遊園地でのオロチはそんな感じがする。
「それに、人間界の遊園地だと楽しめないんじゃないかなあ?」
そもそもオロチは他人には見えない。変化すればそこそこ遊べるだろうけど、長時間変化し続けるのは疲れてしまうだろう。しかしそんな懸念は無用だったようだ。
「行くのは人間界のものではない。妖魔界のものだ」
「え?妖魔界にも遊園地があるの?!」
「ああ。最近できたんだ」
ぴらり、とオロチが懐から2枚のチケットを出した。そこにはゲラゲランドと書いてある。
「どうだ?行ってみないか?」
断る理由なんてない!私は大きく頷いた。
「う、わあ!すごい!」
「想像以上だな」
むこう谷駅の夜に止まるという、妖魔特急に乗って、私たちはゲラゲラ奈落リゾートにやって来た。ここはいくつかの施設に別れているらしく、私たちが行くゲラゲランドはその中の一つだという。
火山のような形をした大きな滑り台に、から傘お化けをイメージした遊具。メインアトラクションのジェットコースターは、園内を一周できるようになっている。
もちろん、園内を闊歩するのは、当然妖怪たちだ。そんな中私だけ人間で大丈夫かなあと思ったけれど、皆楽しそうに遊び回っているからか、気付いていないようだった。これなら楽しく遊べそうだ。今度景太も連れてきてあげよう。
「ねえ、オロチ!どれから乗る?やっぱりジェットコースターかな?」
「まあ慌てるな。時間はたくさんあるから、一つずつ回ろう」
「うん、そうだね!えへへ何か、興奮してきた!」
「そうか。それなら…良かった」
ニコッとオロチが笑ってくれたので、私も笑みを返す。「行こうか」と言ってさりげなく手をとられて、その後を追った。オロチに遊園地のイメージがないって思って、悪いことしたなあ。だって、こんなにも楽しい!オロチと一緒に遊園地に来たというだけでワクワクする!
「あ!あそこジェットコースターの乗り場だよ!行こうオロチ!」
「ああ。って、走ると危ないぞ」
「大丈夫!早く早く〜」
仕方ないなあといいたげに苦笑するオロチを引っ張って、私は進む。さあ、今日は遊び倒すぞー!
久方ぶりの遊園地に心踊らせて、私はジェットコースターのゲートをオロチと潜ったのだった。
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さて、ジェットコースターでのオロチはというと、やっぱりクールだった。私ばかり叫んでいたような気がするけれど、降りたときに「楽しかったな」と言ってくれたので、それなりに楽しめたのだと思う。そんなところもオロチらしい。
次は何に乗ろうかなあ。入り口でもらった地図を開く。今いる場所を確認するために顔をあげると。
「…あ、」
「どうした?」
ふいに飛び込んできた、「土産物」の文字。入り口に、商品として可愛いストラップがかけられていた。不思議な色の石がついていて、キラキラ光っている。
「わー!可愛い!」
「根付け…か?」
「うん。これ可愛くない?」
見てみて、とオロチに掲げて見せる。それを見たオロチが、ふむ、と顎に手をやった。そしてそのままそれを二つ掴むと店内へ…って、え?!
「お、オロチ?」
慌てて後を追いかけたがすでに遅く、オロチはお会計を済ませてしまった。そのまま手渡される、キラキラのストラップ。
「…いいの?」
「ああ。お揃いにした」
二つ買ったうちの1つを、オロチが腰ひもに括る。ゆらゆら揺れたものは、私と一緒。オロチと一緒。
「ありがとう、オロチ」
「いや、本当は俺が欲しかったんだ。七海と繋がる、何かが」
妖怪ウォッチを持たない私は、オロチからメダルを受け取っていない。確かに恋人ではあるけれど、指輪をするわけでもないし、物理的な繋がりはなかった。それが寂しいなんて思わないけれど、でも、こうしてお揃いのものを持っているのは、やっぱり嬉しい。
恋人なんだって、ストラップを見て再確認できるもの。
「大事にする。私も、ずっとつけてる!」
「ああ。こちらこそ、礼を言う。受け取ってくれて、ありがとう七海」
そう言うオロチが、私は、大好きだ。
ああ、もう、こんなに楽しくて幸せな日があってもいいのかなあ。ずっとこの時間が続けばいいのに。
オロチと再び手を繋いで歩き始める。
お揃いにしたストラップが、園内のライトに反射してキラキラ光っていた。
「こんな時間がずっと続けばいいな」
私も同じことを思ってたよ、オロチ!