わけあたえる体温

今日はおばあちゃんの住むケマモト村に遊びに行く日である。

本当はバイトの予定があったのだけど、急遽シフトの交代を頼まれたことで、ぽっかりあいた休日だった。その隙を、景太が見逃すはずがなく、今こうして私はジバニャンたちも引き連れてケマモト村へ向かう電車に乗っている。

たたん、たたん、と緩やかに電車は動く。窓の外は快晴。太陽の光が柔らかく入ってきて、思わず欠伸が出てきた。ふあああ。


「姉ちゃん?眠いのー?」
「うん、眠い」
「電車の揺れって絶妙に気持ちいいもんね〜」
「オレっちもわかるニャン!この揺れが気持ちよくてすぐ眠くなるニャン」
「ジバニャンはいつも寝てるじゃん」
「猫ですからねぇ」


ふあああ、と欠伸をもうひとつ。隣ではジバニャンが大きく伸びをすると、毛繕いを始めていた。何だか平和だ。ここのところバイトで忙しかったし、こうして景太と、ジバニャン、ウィスパーでどこかに出掛けるなんて久しぶりだった。

窓枠に肘をつけて、頬杖をついてみる。ぽかぽかして気持ちいい。このまま寝れそう…。


「ニャニャ?七海ちゃん寝るニャン?」
「うーん今ものすごく眠いから寝ちゃうかも…」
「じゃあオレっちも!七海ちゃんの膝の上でお昼寝したいニャン!」


わあ、なんて可愛いおねだり!「いいよ、おいで」と言えば、ジバニャンが「にゃったー!」と膝に飛び乗ってくる。ごろにゃーんと喉を鳴らす姿は文句なしに可愛いと思う。そして膝の上の心地いい重みが、さらに私の眠気を誘っていた。


「ジバニャンずるい!俺も姉ちゃんの隣に行く…!」
「ええー?狭いよ…」
「ジバニャンだけずーるーいー!」


すると、有無を言わせず景太も隣にやって来た。
「俺もねるー」とか言いながら、私の肩に頭を乗せて甘えてくる。膝の上にジバニャン、隣に景太。ぬくぬくしてさらに温かい。ふあああ、眠い。欠伸が止まりません。


「ちょっと、ジバニャンもケータくんも、七海さんに甘えすぎじゃありやせん?」
「七海ちゃんがいいって言ったニャン。ねー?」
「姉ちゃんがいいって言ったし。ねー?」
「ははは、うん、まあ。そうだねえ…」


ジバニャンたちの会話に頷いて、私はさらに欠伸をひとつ。ああ、もう本当にこのまま寝れる。たたん、たたん、という電車の音も、最高のBGMだ。あとは何か、クッションみたいなものがあればいいなあ。「七海さん?」ウィスパーを見て、私は手を伸ばした。良いこと思い付いた!


「わ、わ!七海さん?!」
「ウィスパーはクッション代わりね」


ぎゅっと力を込めてみれば、ふわふわな感触が頬に当たった。これは最高だ。よく寝れそう。本能のまま、瞼を閉じる。ふあああ。おやすみなさい。


「ええ?!ちょっと!七海さん?!いくら私の体が愛されボディーだからといってさすがにこれは…!」
「ウィスパーうるっさいニャン!」
「姉ちゃんに抱っこされて文句言うなんて贅沢。うざいんですけどー!」
「えええケータくん辛辣!さすがに傷つきますから私ぃぃ!」
「だーかーらーうるっさいニャン!」
「がふっ?!」


膝の上のジバニャンが猫パンチを繰り出したのか、抱えていたクッション…もといウィスパーに振動が走った。でもそんなの気にならないくらいふかふかなウィスパー。だんだん意識が遠退いていく。まだ賑やかな声が聞こえていたけれど、すぐに気にならなくなっていた。夢の入り口は、すぐそこだ。




「姉ちゃん?寝ちゃった?」
「最近バイトで忙しそうでしたもんねぇ。しばらく寝かせてあげましょう」
「だからオレっちも寝るニャンからウィスパーは静かにしろニャン!」
「はいはい。わかりましたよ!ではおやすみなさいケータくん、ジバニャン」
「うん、おやすみー」


ケマモト村までは、まだ遠い。