コマさん兄弟と私
「うわー!すごいズラ!大きいズラ!」
「に、兄ちゃん!これがジャンボパフェズラか?!」
「そうだ〜美味そうズラね、コマじろう!」
「うん!美味しそうズラ〜!」
テーブルに届いた特大ジャンボパフェをみて、コマさんとコマじろうが目をキラキラさせていた。二人とも口から涎が垂れている。自然と笑みが浮かんできて、「さ、どうぞ食べて」と言えば、「いただきますズラ!」という何ともいいお返事が。こんなに喜んでもらえたなら、私も幸せである。
今日はコマさんの弟であるコマじろうが田舎から上京してくるということで、おすすめスポットへの案内役を私がかっていた。コマさんは、大事な弟をおもてなししたいらしい。
いろいろ考えた結果、このカフェでまずは腹ごしらえ、と思ったのだが。
私はもう一度特大ジャンボパフェに目を移した。
これは、でかい。でかすぎる。
実は私がコマさんとコマじろうを、このカフェに誘ったのは、このパフェの大きさにも由来する。一人じゃ絶対食べきれないパフェを、誰か一緒に食べてくれないかなあと思っていたのだ。そこにちょうどやってきたコマさん兄弟。コマじろうとは初めて会うが、私の下心にお付き合いさせて少し罪悪感。でも喜んでくれてるし、結果オーライかな!おもてなしも成功している…はず!
「もんげ〜!美味しいズラ〜!幸せズラ!」
「兄ちゃん、都会にはこぉんな美味しいものがあるズラねえ!」
「そうだぞ、コマじろう!都会には美味しいものがいっぱいあるズラよ!ね、七海!」
「あはは。うん、そうだね。じゃ、私も食べようかな」
「早く七海も食べるズラ!もんげ〜美味しいズラよ!」
あらら、コマさんってば、コマじろうにおもてなしすること、忘れていない?
しかし、コマさんに急かされて、私もスプーンを手に取った。上からクリームとフルーツを掬って一口。…んー!確かに美味しい!
「どうズラ?!美味しいズラ?!」
「うん!すっごく美味しい!幸せ!」
「オラもこんなパフェ食べれて幸せズラ〜!」
「オラも!今日都会に来れて幸せズラ〜!」
ぱくぱくぱくぱく。私たちはきゃっきゃっ言いながらパフェを食べていく。その頃には私も、コマじろうへのおもてなしのことをすっかり忘れていた。だって、ここのパフェ美味しすぎる。これはいける。食べきれるよ私。
そして、にこにこ笑いあうコマさん兄弟は目の保養だ。心からだもエネルギーチャージ!とはこの事である。幸せ。
それにしても二人はよく似ているなあと思っていると、コマさんの口元にクリームがついているのに気付いた。目の前のパフェに夢中な彼は気づいていないけれど。
「コマさん、クリームついてるよ」
「ズラ?!どこズラ?」
「兄ちゃん、ここ、ここ」
「ズラ〜?」
同じく気付いたコマじろうがトントン、と口元をさす。しかし、これまた絶妙にポイントを外してしまい、全く取れることはなかった。アワアワするコマさんと、大人な対応のコマじろうは何だか正反対だ。これは取ってあげた方が早い。
「ここだよ、コマさん」
指を伸ばして、口端についたクリームを拭う。「ありがとうズラ!」少々照れくさそうなコマさんに、「どういたしまして」と言えば、なぜかじーっと私の指先を見つめてきた。
何だろう?
「コマさん?」
「もったいないズラ!」
そしてそのまま、ぺろり。
コマさんの小さな舌が、私の指を通過していった。本当に一瞬のことだったから、指を引っ込めるのも忘れた。なんて小悪魔なのこの子!
「に、兄ちゃん!女性にそんなことしたらダメズラ〜!」
「え?でももったいないズラよ?」
「でもじゃないズラよ!七海さん、ごめんなさいズラ…」
呆然としていた私に、慌ててコマじろうが頭を下げる。
なるほど、コマさんよりコマじろうのほうが世間慣れしてるししっかりものなんだなあ。「大丈夫、気にしてないよ」と言えば、「申し訳ないズラ」ともう一度頭を下げられた。一方コマさんといえば、もう目の前のパフェに再びパクついていた。
困った顔のコマじろうをみて思う。
自由奔放な兄弟を持つと大変だよね。
「本当に気にしてないからね。さ、コマじろうもパフェ食べよう?溶けちゃうよ」
「…はいズラ!」
にっこり笑えば、コマじろうも気をとりなおしてスプーンを手にする。そして私も再びパフェをつつくことにした。
初めはコマさんがコマじろうをもてなす予定だったのに、今は逆だ。
コマじろうも、実はそれに気づいているのだろう。それでも兄をたて気づかう彼を見て、私はさらに微笑ましく思う。
いい弟がいて、良かったね、コマさん。
さて、このあとはどこにいこうか。今度こそコマじろうをおもてなししよう。
そんなことを考えながら、私はまた一口、パフェを頬張ったのだった。