生まれ変わってもまた君のそばに
「ロボニャンは未来のジバニャンなんだよね?」
たまたま遊びに来ていたロボニャンをみて、ふと思ったこと。それを問えば、ロボニャンはきょとんと(していると思われる)顔をして、「何だ急に」と言った。人工的な声だが、少し訝しげな雰囲気を感じとることができる。ロボットであっても、感情まで機械化していないということなのだろう。
「一人称とか、しゃべり方とか、結構変えちゃったんだ?」
「まあな。その方がスーパーロボットみたいだろう?」
「確かに!でもロボニャンは十分スーパーマンみたいなロボットだと思うけどね」
景太の無茶ぶりにはきちんと答えるし、お願い事もほとんど叶えてくれる。それこそ「未来の世界にはトホホはない!」と言う通り、彼は何でもこなしてしまう、とにかくすごいロボットなのだ。
それに体内にはチョコボー工場があるものね。
そういえばロボニャンは「それは光栄だ」と言うと、早速体内で作ったチョコボーを差し出してくれた。やったー!
「ん〜おいしい!一家に1台ロボニャンだね」
「私がいれば不可能はない!」
「本当!」
ありがとうの気持ちを込めて、ロボニャンの頭を撫でる。その感触は今のジバニャンとは違い固いけれど、目を細めて気持ち良さそうにするその様は、やっぱり猫らしかった。それにしても。
「前からちょっと、気になってたんだけどね、何でロボットになったの?」
「…まあ、いろいろあったからだ」
「いろいろ?」
「いろいろだ」
私の手をすり抜けて、ゆらあ、と浮いたロボニャンは、くるりと背を向けてしまった。余計なことを聞いてしまっただろうか。言いたくないのか、ロボニャンには珍しく言葉をつまらせている。「いろんなことが、あったんだ」改めていうその声は、少し重い。
「そっか…」
「一つ言えることは、未来の世界は不可能なことはなくなったのに、『寂しい』ということだ」
「寂しい?」
「人の命は有限だからな」
妖怪には果てし無い時間がある。でも私も弟の景太も人間だから、いつかは死ぬだろう。それが明日かもしれないし、50年後かもしれない。それは私たちにはわからない。でもロボニャンはそんな私たちの未来を知っている。
私が死んで、景太が死んだら。『ジバニャン』はどうやってこの世界に在り続けるのだろう。未来の『ジバニャン』はその答えを出すためにロボニャンになったのかもしれない。
そう思うと、ロボニャンの口にした『寂しい』という言葉にとても切なさを感じるのだった。
「辛気くさくなってしまった。悪かった」
「いやいや、私のほうこそ。余計なこと聞いてごめんね」
「謝る必要はない。なぜなら『そういう未来』なのだから。私はもう受け入れている」
「…そうかあ」
「それに約束したからな、七海と」
「私と?」
突然出てきた私の名前に、今度きょとんとするのは私の方だった。私は何かロボニャンと約束をしただろうか。全く覚えてないんですけれど。
「もちろん今の七海ではない。未来の七海とだ」
「未来の私?何を?」
「それは秘密だ。なぜなら私と七海だけの秘密の約束だからだ」
後ろを向いていたロボニャンが、くるりとこちらを振り返って、「しー」とポーズをする。その顔は何だかいたずらを思い付いたような顔だった。「ええー気になるよ」未来の私が結んだのだから、今の私が知ってもいいはずなのに。
「秘密は秘密だ。その約束は私の願い事でもある。秘密にしないとその『願い事』が達成されなくなるかもしれない」
「願い事は秘密にしておくものだと言ったのはお前だぞ」それを言ったのは『私』ではないのだけど、もしかしたら未来の『私』なのかな。
「私はその約束事が果たされるのを待っているんだ」
ロボットなのに、なんて表情が豊かな妖怪なのだろう。幸せそうにはにかむロボニャンに、私はもう何も言えなかった。
ロボニャンはいろんな悲しみを乗り越えて、今ここにいる。それでいいのだろう。ただ、寂しいのには変わりないはずだ。
「でもさ、ロボニャン。寂しかったらいつでも会いに来てよ。待ってるから、ね?」
少しでもその寂しさが減るなら。未来の『私』ではないけれど、『私』は『私』だから。会いに来てくれたら嬉しい。
「ふっそうだな。ケータから呼ばれなくても会いに来よう」
「約束ね」ロボニャンが手を差し出したので、私はその手を握る。指切りの代わりに握手を。
「今度は私が待たせる番だな」
また約束事が増えたと、ロボニャンは言う。
いつでも待ってるよ、ロボニャンにとっては過去の、この世界で。