安息の場所

自宅マンションの傍まで帰って来た時、
空から、ふわりと降りてきた影は、あたしの目の前に降り立った。

「フユニャン!」

それは、間違いなく彼だったけれど、どうも様子がおかしい。
足取りがおぼつかなく、ふらふらしていて、

「ナマエ・・・!」

掠れた声で、あたしを呼んだ。

「どうしたの?!何があったの?!」

強大な敵と戦って、怪我でもしたのだろうか。
正義感の強いフユニャンのことだ。
誰かを守って、という可能性は、充分にあった。

倒れる前に駆け寄って、そのちいさな身体を抱きとめる。

「だ、大丈夫!?しっかりして・・・!」

すると、彼は、弱々しく答えた。

「・・・なにか・・・食べ物を・・・!できれば、魚だと・・・嬉しい・・・!」

ぐぅぅー・・・

ベルトを付けたお腹からは、盛大な音が聞こえてきた。


___


「ナマエ、突然すまなかった。迷惑をかけたな。」

空腹なんだと理解したあたしは、フユニャンを抱き上げて家へ向かい、
買ってあった鮭の切り身を出してあげた。

2枚ペロリと平らげてしまったフユニャンは、すっかり元通りになったようだ。

「うぅん。もう、大丈夫なの?」

「あぁ!大丈夫だ!ダイエットプログラムを少しハードにやり過ぎただけだ。」

"ダイエット"という単語が引っかかり、聞くと、
彼は照れながら、油断すると"デカニャン"という大きな妖怪になってしまうことを教えてくれた。
名前だけでイメージしてみたけれど、きっと今の姿の方が、あたしは好きなんだろうな、と思った。


「よかったら、もう少し、ゆっくりしていってね。」

「いいのか?」

「うん!」

うちに住みついているキャプテンサンダーは、クレイジー極バンドのメンバーで新年会(兼、仲直り会)って言ってたし、
USAピョンともイナホちゃんとも、約束をしていない。
今日の夕飯は、一人だなって、思ってたところだった。

それに、フユニャンとは、色々と話してみたいことがある。

彼は、キャプテンサンダーから妖怪ウォッチを受け取るよりもずっとずっと前、
あたしが、まだ4歳の時に、鬼時間に迷い込んでしまったところを、ケイゾウおじちゃんと一緒に助けてくれた。
以来、会うことは無かったけれど、
つい最近、ちょっと大きな事件に巻き込まれた時に再会し、また助けてもらったのだ。
あの時は、バタバタしていてゆっくり話せなかったから、
機会さえあれば、と思っていたところだった。


フユニャンにミルクを用意し、こたつでゆったりしていてもらい、
あたしはキッチンで、自分の夕飯を準備する。

ケイゾウおじちゃんのお孫さんであるケータくんの、今までの活躍の話とか。
あたしのおばあちゃんと、ケータくんのおばあちゃんが、仲良き恋のライバルだった話とか。
逆に、あたしとUSAピョンやキャプテンサンダー、イナホちゃんの話をしたり。

話をしながら出来上がった夕飯を、こたつテーブルへ運ぶと、
そこには、文字通り丸くなって眠る、フユニャンの姿があった。

起こさないように静かに配膳し、
隣に座る。

定期的に上下する脇腹。
すやすやという寝息。

かわいい。

すこしだけ、という気持ちで、
そっと、そっと。
毛並みに沿って、脇腹を撫でた。

「・・・」

綺麗な、青い身体。
存在感を放つ、額の傷。
勇ましい、赤色のマント。
可愛らしい、丸いしっぽ。

この小さな身体が、あたしを2度も助けてくれた。

「・・・フユニャンは、あたしのヒーローだね。」

もう一度、掌で脇腹を撫でて、呟く。

「・・・ありがと。」


むにゃ、と何か寝言を言ったフユニャンは、
もぞもぞと、なぜか這い上がるようにして、頭をあたしの脚の上に乗せた。

それは、まるで、膝枕のように。

びっくりしたけど、仰向けになって気持ちよさそうに寝ている姿に、自然と笑みがこぼれる。

「たまには・・・こうして、ゆっくりしに来てね、フユニャン。」

あたしに返事をするかのように、
彼の寝顔が、幸せそうに笑った気がした。


***おまけ***

「What?!・・・フユニャン?」

「あ。キャプテンサンダー、おかえり。」

「イイノカ?膝枕ナンカシテテ。」

「え?なんで?」

「コノ光景ヲUSAピョンガ見タラ、ナンテ言ウカ・・・」

「えっ?!ちょっと・・・いま、妖怪パッドで写真撮った?」

「浮気現場、送信♪(ナーンチャッテ。)」

「う、浮気って!?」



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