▽2018/02/14(Wed)
生きてます

夢でもCPものでもなく、オールキャラ(?)のホラーテイストで、そこそこまあまあ暗い自分の趣味全開のワートリ話でオフにサークル参加しよう!と思い立ったがために消えてました。
進捗やばそうです。分冊になる予感…!

そして書いてる息抜きに別の話を書きたくなり、発散のためにfgoアンデル先生書き殴ったので、追記に投げておきます。
書き殴ったものなので、推敲したらきちんとアップします。
それまでは、ここを見ている奇特な方へのおまけのお菓子的な感じの扱いで、楽しんでもらえればうれしいです。
※名前は立香固定になってます。

拍手もありがとうございます!全て目を通しています!返信はもう少しお待ちください…!


 ――青。目を開けると一面の青だった。
 そして次に気がついたのが、内臓が浮き上がるような感覚と、全身を包む強い風。
 おかしかった。前後左右の感覚がないのだ。もしかしてもしかしてもしかして。嫌な記憶が思い出され、さあっと血の気が引く。これは、これは、もしかして。
「――ッ落ちてるううううう!」
 宙空を地上へ向けて落下しているのだと認識すると同時に、私は大絶叫した。
「やだやだやだやだやだこわいこわいこわいこわいこわいいいい!」
『――マスター! しっかりしてくださいマスター!』
「マシュ! マシュ……!」
 聞こえてきた後輩サーヴァントの声に必死ですがりつく。高いところはいやだ。そこから飛んだり落ちたりするのは、こわい。
『マスター! 近くにサーヴァントの姿はありませんか!』
「わかんないよたすけてましゅ……!」
 まわりを見る余裕などない。頭から落ちているのか、背中から落ちているのか、自分の今の体勢すらもよくわからないのだ。落下しているということだけが明確で、それがひたすらにおそろしい。
『これはパニックを起こしているなあ。立香ちゃん、聞こえるかい? 君の頼れる天才だよ。私のことがわかるかな?』
「――だ、だ、だびんちちゃん……!」
『そう、万能で、美しく、誰もが知るレオナルド・ダ・ヴィンチさ! それでは見事正解したマスター、立香ちゃん。これから私が言うことをしっかり聞いてほしい』
「たすけてよおだびんちちゃんんん!」
『だーいじょうぶ、助けるとも。助かるとも。だから安心したまえ。君には私もいるし、マシュもいる。その他にも大勢のサーヴァントがいるじゃないか』
 ――なっ? ウィンクもついてそうな軽やかな声音に、少しだけ不安がやわらぐ。この万能の天才が言うのならばそうなのだろう、と思える全幅の信頼。
『君が助かるのは簡単なことさ。一緒にレイシフトしたサーヴァントがいるだろう。彼らを呼ぶんだ』
「どうやって!」
『令呪を使うのさ。誰でもいいから呼んでみたまえ。誰か一人くらいは来るはずさ』
『ダ・ヴィンチちゃん、そんな説明、少し大雑把過ぎではないですか!』
「――だれかきてえええええええ!」
 右手の甲に意識を集中し、叫ぶ。一瞬だけ、甲に燃えるような焼けるような熱を感じ、
「――まったく。うるさいマスターだな、鼓膜が破けそうだ」
 すぐそばに、自分以外の存在が現れた。
「――っあ、あ、あんでるせんせええええ!」
 青い髪、大きな眼鏡に、少年の体躯。サイズの合っていない白衣をばたばたとはためかせながら私と一緒に落下するのは、キャスターの英霊、アンデルセンその人だった。
「たすけてええええええ!」
「叫ぶなうるさい! しがみつくな鬱陶しい!」
「だってだってだってこわいよおおおお!」
 見知った顔に安堵すると、ぶわりと涙があふれた。目尻から雫をこぼしながら、私よりも一回りもふた回りも小さい身体にしがみつく。ここで彼を離してしまったら、もう助からないと思った。
 特異点キャメロットと新宿で行われた二度の人間ロケットは、私に高所恐怖症をもたらした。
 想像してほしい。サーヴァントとという人を超えた存在が側についているとはいえ、パラシュートなどの安全装置もない生身の状態で空を飛ぶ気持ちを。心に傷を残したとしてもおかしくはないだろう。
 さいわいなことに高所からの射出、落下の類は滅多にないため、その後の日常生活に大きな支障がなかったのだけれど――これだ。レイシフトも完璧ではない、不安定で不確定なものだとはわかっているけれど、よりにもよって空に放り出すなんてあんまりだ。
「安心しろ、お前は助かる」
 外見と不釣り合いな低い声が、ごうごうとうなる風の合間を抜けて耳に届いた。
「しがない作家の英霊とはいえ、サーヴァントには違いあるまい。お前のクッション代わりにくらいにはなるだろうさ」
「――え――」
 袖を余らせた腕が、私の背中に回る。その力は存外に強く、しっかりとしていた。
 意味を理解した瞬間、身体が奥底から凍りつく。回りだした脳が、二人の状況を認識する。地面を背に、空を正面に、私を抱えるハンス・クリスチャン・アンデルセン。そのアンデルセンにかばうように守る抱え込まれた私、藤丸立香。これは、つまり、このままだと――。
「や――やだやだやだ、アンデルセン!」
「暴れるな! 体勢が崩れてお前が下になったらどうする。死ぬぞ!」
「やだやだやだ――いや……!」
 このまま落下して死ぬのはいやだ。けれど、私をかばって彼が下敷きになるものいやだ。
「――ほうぐ! ほうぐで――」
「俺の宝具に期待するのは諦めるんだな。他にサーヴァントがいるならまだしも、俺は俺のことを心底嫌っている。自分の『最高の姿』なんぞ、一行さえ書き上がるものか!」
 窮地だというのに、アンデルセンはいっそ堂々と誇らしげに言い切った。厭世家で自分自身のことを嫌っているとは思っていたけれど、こんな状況なのだから、もう少しがんばってみてもいいのではないのだろうか!
 みるみる地上は迫ってきている。広がる緑が樹々なのだとわかるくらいに。どのくらいの高さから落ちてきたのかはわからないけれど、タイムリミットもそう長くはないのだろう。どうすればいい。私はマスターなのに。何もできないのか。
「やだよお……!」
 アンデルセンの小さな身体にしがみつきながら、駄々をこねるように叫ぶ。それでどうなるわけでもないというのに。
『――マスター!』
「間に合ったなあ――」
 通信のフィルターがかかったマシュの声と、それに重なるようにして聞こえた悠々とした声。
「――スリサズ。イーサ。ライゾー――」
 呪文というにはあまりに短い。単語をつなげたような聞き慣れないそれは――ルーン魔術だ。
「――キャスタあ!」
「助けに来たぜマスター、童話作家のセンセイ」
 空より濃い青の長髪を風に遊ばせながら、キャスターのクー・フーリンが私たちに向かって杖の先を向けていた。
『うん、間に合ったようだね。よかったよかった。キャスターのクー・フーリン、君に感謝だ』
『私からも感謝を!』
 落下のスピードが、少しずつ緩やかになっていく。キャスターのルーン魔術なのだろう。真下は森林のようだけれど、この様子なら枝葉で肌を切るくらいで済みそうだった。
「遅いぞドルイド! 貴様それでも光の御子と名高いケルトの大英雄か?」
「こちとらマスターの令呪が届かないくらい離れたところに飛ばされてたんだよ。間に合っただけ上等だろうが」
「他のやつらはどうした」
「女魔術師と絵本の嬢ちゃんなら、自力でなんとかなるだろ」
「――うっ――」
 アンデルセンとキャスターの返しを聞いていると、ぶわりと涙があふれた。――助かったのだ。私も、彼も。地上に叩きつけられてぐちゃぐちゃになることは、もうないのだ。
「おい、藤丸立香、まさかお前泣いているのか」
「――った――よかったあ……!」
 ぎゅうぎゅうとアンデルセンを抱きしめて、その肩に顔をうずめる。
「ま、こればっかりはお前さんに非があるな。自分を犠牲に、なんてこのマスターが良しとするわけがないだろ」
「……気に食わん。高所恐怖症でパニックを起こすような小娘だぞ。まったく、実に、心の底から気に食わん」
「ハイハイ。さ、地上はもうすぐだ。あんたはそのままマスターを抱えてな」
 空中でほとんど停止した私の背中へ、躊躇いがちな腕が回る。ありがとう、と鼻声でささやくと、やけくそのように力が込められた。




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