<実は>
「…………」
「………」
「……………」
「……きゅぅ……」
「なぁ…もしかして、だけど…」
「そ、そんなわけありません!隊長補佐たる者!迷子になんて!!」
「まだ言ってないぞ…おれ達やっぱり迷子になったのか。」
「よく知ってると思ってたのに、方向音痴アル?ご主人と一緒アル…」
「え…?ラスさまも…ですか?」
「えっ?まさか方向音痴だったのか?地図持って得意気に見えたけど。」
「…いつもはタイウィンさまが先導して、この地図は地形把握用なんです…」
ぐるぐる、ぐるぐる…
同じところばかりを回っている気がしながらも歩き続けていた。
でも、とうとう言われてしまった。
しかも方向音痴二人が迷子…なんて!
ラスさまも普段はメルセデスちゃんに導かれているらしく…
似た者同士だったのだと、気づいた所は嬉しくも思うが、よりによって欠点が似てるなんて。
はぁ……忙しいと思って、タウに頼らなかった私が悪かったなぁ…
自由に歩いているうちに、メルセデスちゃんともハグれてしまったみたいだし。
気がついたらラスさまが隣に着いてきてくださっていたから、まだ寂しくもないけど…
「ラスさまは、メルセデスちゃんを置いてきても良かったのですか?」
「いや、良くないけど…でも、一人でスタスタと歩いていくから、離れない方が良いだろうな、と思って着いてきたんだ。」
「ごめんなさい…私、つい気になる物を見つけたら、周りが見えなくなるタイプで…散々怒られたのに…」
「きゅきゅぅ…元気だしてほしいアルゥ…アルキィを抱きしめてみるアル!きっと元気出るアル!」
「いいの…?……わぁ…もふもふ…っ…ふふ……」
「……どうやって戻ろうか?この路地裏から抜けれたら簡単なんだろうけど…」
「変な路地に入って本当にごめんなさい……一人じゃなくて良かった……ラスさまがいなかったら…私…っ…」
「いや…止めなかったおれも責任があるよ。でも着いてきてよかった。」
アルキィくんは温かくてもふもふしていて心地よいけど、心細さは拭えない。
どうしよう…ずっとこんな路地を彷徨い歩き続けて日が暮れたら…
もっともっと治安が悪くなって、お金を持ってると知られたら…
どうしようもない不安が襲いかかって、涙が抑えきれそうにない。
泣きそうで堪らなくて、静かな暗い路地裏で蹲っていると、足音が響き伝ってきた。
意地の悪い人に迷子がバレてしまったのだろうか!?
逃げようと思っても怖くて腰が抜けてしまった。
せめて、顔を見ないようにアルキィくんに顔を埋める。
「あぁ、いた。全く…精霊の導きがなければ、君が迷子だという事も分からないというのに。」
「ラスさま、ご無事で何よりです!」
「あ……た、タウ…!」
「ゎ…っ……はぁ……方向音痴同士で迷子になると、途方に暮れてしまったでしょう?」
「いや…おれはまさか、方向音痴だとは思わなくて…」
「はは…目が離せないと言うのが、よく当てはまるような子なんです。ご迷惑をおかけしましたね、さぁ戻りましょうか。」
「ぁ…な、何で…タイウィンさまはここに…?」
「うん…巡回してたんだ。そうしたらラスさんを探すメルセデスさんと会ってな。一緒に探してたら、君の声が聞こえたんだ。」
「そう…だったんだね……精霊さん…いつもごめんね…」
「はあ…まさか、ラスさん達といる時に自由行動するとは思わなかったな。逸れるなといつも言ってるだろう?」
「ごめんなさい…っ…気をつけるから…」
「ラスさまも変だと思った時点で、止めておくべきでしたよ。」
(方向音痴な二人が揃って説教されてるアル…)