起床
宵の明星の続きです

ふと目が覚めた。
腰がずきずきと痛む。
静かに寝息をたてて眠っている黒無常の顔をぼんやり見つめる。
下ろした髪が、口元を隠してしまっている。
肩越しに襖の向こうを見るが、まだ暗かった。
たとえ、今が朝だったとしても冬の朝は暗いから分からない。
ぎゅっと黒無常の胸元に抱きつき、顔を擦り寄せる。

「…………、……なんだ…おきたのか…?」
「…起こしちゃった…?」
「きにすんな……ふぁぁっっ………あぁー………外、暗くて朝かも分かんねぇな。」

くすくすと笑いながら言う。
顔にかかった髪を避けてくれる手をよく見れば、傷がついていた。
ぱっと手を掴んで、じっと見れば引っかき傷ができていた。

「…お前がつけたんだよ。」
「私が…?………痛くない…?」
「痛いもんか……一生残しときたい位だ。」
「で、でも……他にもつけちゃった気が…」
「ここにある痕と同じもんだ、もっと付けてくれたって良いんだぞ。」

鎖骨辺りを指でなぞられる。
…昨日もたくさん噛まれたな。
鏡で見れば、その赤さ加減に気が遠くなりそうだけど…
見下ろしただけでも、たくさん歯型がついているのが見えた。

「なぁ、今日は初詣に行くのか?」
「…ん…?なんで?」
「だって、あれ…晴れ着だろ?」
「黒無常も一緒に参る?」
「あぁ、当たり前だろ?…な、弟よ。」
「新年早々、弟呼ばわりとは困りましたね…」
「…!」

後ろから声が聞こえた。
いつの間に起きていたんだろう。
まぁ、普通に話していたから起こしてしまったかもしれないけど…
お腹に腕を回して、後ろからぎゅっと抱き寄せられる。
耳下で話されると少しくすぐったい…

「みこ、おはようございます。」
「…おはよう。」
「…………あぁっ!初挨拶…取られたあぁ…」
「…大きな声出さないでください…まだ口吸いはしてませんから…」
「じゃ、みこ…おはよう。」
「おはよう……ん…………んんぅんっ…?!」

軽く触れ合うだけかと思えば、後頭部を押さえられた。
たくさん流し込まれる唾液が、すぐに口端から溢れた。
息が苦しくなってきたところで、わざとらしく舌を出したまま、顔を離す。

「…ごちそーさんっ。」
「…ふぅ……ふ…」
「………朝なのか、分かりませんね…」
「分かんねぇよな?」
「遣いが来るまで…できますよね?」
「来てもやるんだよ…」
「へ……え?あ、ま、待って…?!」
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