おにぎり噺
生存確認用。おにぎりの噺はしません
おにぎり根多帳2019/04/24 12:38
【タイムスリップ室町】
室町の忍術学園にタイムスリップしちゃった現役女子高生。やまなしおちなし。
あなた=**
**は今年16歳になる関西のある私立の小中高一貫に通う女子高校生。趣味は読書。性格はいたって常識のある普通の女の子だ。学校ではクラスの同級生とテレビ番組の話で盛り上がるし、帰りには近くのスイーツ店で可愛いお菓子と紅茶を飲みながら、友達と先生やテストの話で愚痴りあう。どこにでもいるような今時の、しかしいつの時代も変わらない女子高生であった。
「ねぇ、**知ってる?うちの学校って昔は忍者の里だったらしいよ」
同級生で幼馴染みのユカリは放課後、帰り道に寄ったカフェでタピオカジュースを片手に**にそんなことを言った。**は聞き慣れない言葉に首をかしげる。
「なにそれ?漫画のはなし?」
「ほんとの話だって!うちの学校の大川理事長っているじゃん?忍者の家系らしいよ」
「えぇ?ユカリ、からかってるでしょ。騙されないよ?」
信じようとしない**にユカリはほんとだって!と真顔で言った。
「本当だとしても、どーでもいいし・・・忍者なんて今いないでしょ」
「まぁ、そうなんだけどさ・・・夢がないな〜」
そのときは他愛もない会話だった。**も特に興味はなく、ユカリが適当な所から聞いた嘘の話だろうと想っていたのだ。このあと**が学校の井戸に落ちるまでは。
その次の日の放課後の事だった。**は図書室へ行き気になる小説の続きを読もうと棚を見ていたとき、「大川学園の歴史」という書物を見つけた。その本は随分昔からあるのだろうか。綴じ方も昔の古書のような丁装であり、その雰囲気に**は自然と手を伸ばしていた。
「・・・大川学園の校舎の井戸は室町時代からあるの?うそ・・・室町って今から500年くらい前のことでしょ?」
**はその内容が本当なのか少し気になってしまった。昨日何気なく聞いたユカリの話のせいもあるのだろうか。500年も前からある井戸が見てみたくなったのだ。**は小説を借りるのはまた今度にして、大川学園の歴史を借りることにした。それをもって、**は学園の普段人通りの少ない井戸のある場所へと向かう。
草は生え放題、手入れの放置されたその場所は一見不気味に見えた。**はその今にも朽ちそうな岩で作られた井戸を覗く。その井戸は深く、そこが見えず真っ暗だ。そのどこか飲み込まれそうな闇に**は少し恐怖を抱いた。
「・・・やっぱり不気味。帰ろう」
そういって覗いた顔を戻そうとしたとたん、草を踏んで足をつるりと滑らせて**はあっと思う。その瞬間体が前のめりになってそのまま**は井戸に顔から落ちてしまった。
「わー!」
悲鳴をあげて落ちていく**。その井戸は異様に深く、落下が続く。真っ暗な中あまりにも長く落ちていくので**は自分が井戸に落ちている感覚が無くなっていった。奇妙な感覚に**は怯え、夢であるようにと目をつぶる。
長い間落ちていって、意識さえ遠退きそうになったとき、とつぜんごつんと頭を打って**は目を覚ます。
「うぅ・・・なにが起きたのよ」
強く打った頭を抱えて**は起き上がる。目を開けると真っ暗だと思ったまわりは光が指している。少しカビ臭い臭いがして**は体を起こす。大きな木製の四角形の枠・・・まるで檜風呂のような所に**はすっぽり入っていた。
「ここどこ?大川学園じゃないよね・・・」
何が起こったのか、状況が把握できずに混乱しているとどこからかドタドタと何者かが走る音が聞こえる。そしてがらがらと近くの戸が開いた。元気な少年の声がする。
「風呂掃除だー!」
「もー、伊助はりきりすぎ!掃除なんてやだなぁ」
聞いたこともない声だ。**が立ち上がる前にその少年たちが風呂を覗いた。そして**の姿を見て固まる。
「・・・・・・誰?」
「・・・いや、あの・・・」
気まずい雰囲気が流れる。お互い見も知らない者が向かい合っているのだ。いつもの風呂場に謎の女の子がいることに驚いた少年たちは互いを見合わせた。
「曲者じゃない?先生に知らせたほうがいいよ」
「なんか変なかっこだし!」
物騒な言葉を聞いて**は慌てた。少年たちはいわゆる小袖に袴をつけた時代劇でみるような子達ばかりだ。さらには頭に頭巾を被っている。異様な空間に**はさらに混乱した。
「わ、わたし大川学園の井戸に落ちたの!ここはどこ?」
「大川学園?ここは忍術学園ですけど」
「おねーさん、何者?」
じとりと少年たちに睨まれる。**はその視線に、何を説明すればいいのか悩んでしまい、ただただ言葉を失ったのだった。
ーーーーーーーーーーーー
「おねーさんどこからきたの?」
「団蔵危ないよ。怪しい人には声をかけちゃいけないって」
三人の少年たちは**を囲み知らない廊下を歩いている。**は風呂場を出て驚いた。現代の建物とは全く違う木造の建物、電線のない空、地面だってアスファルトではなく土、大地である。目に入るものがすべて現代と離れており目を疑う。
「なんだよキョロキョロして。やっぱり曲者かな」
「あれ?」
伊助は**の衣服を見て立ち止まった。後ろを歩いていた団蔵が思い切り伊助にぶつかる。
「いで!急に立ち止まるなよ〜」
「この服の素材、見たことないからつい…なんだろこれ」
伊助はまじまじと**の制服を凝視する。**が手を出すとその袖を見ていた。
「もしかしたらぁ、異人さんなのかもよ〜」
隣を歩いていた喜三太がぼんやりと言う。なるほど、と二人はうなずく。異国の人ならば自分たちの知らないものがたくさんあるので説明がつく。
「私、日本で生まれたんだけど…ほら、言葉もわかるでしょ?ここ、どこなの?」
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