おにぎり噺


生存確認用。おにぎりの噺はしません



おにぎり根多帳

2019/05/05 18:31

プロ忍小平太 闘牛女 
プロ忍小平太と抜け忍

**=あなた
"抜け忍"
それは忍者の組織を脱退すること。政治・軍事の情報、はたまた里の忍術など、忍びの世界ではその情報漏洩の可能性がある非常に危険な存在だ。ほとんどの忍びでは抜け忍は直ちに処分される者が大半である。

**はその抜け忍であった。しかし彼女は忍者組織に追われることもなく、今では**と名を変えて一人農業をしている。

抜け忍である彼女がなぜ処分されなかったのか。それは単純に「彼女が恐ろしい」からである。

「よいしょっと」

**は農作業を終えてたくさんの米や野菜が入った大きな俵を抱えた。それも2つ重ねて。それでも全く息を切らさず平気な顔して小屋へ戻っていく。そして出来るだけ優しく戸を引いたつもりだった・・・がその戸ががたりと外れてしまった。立て付けのせいではない。彼女が力加減を誤ったのである。

「あら、またやっちゃった。もう、やだなぁ」

**は俵を置いて戸を直そうと枠をよいしょとつかむとばきり、と戸が砕けた。

「あっ、あ〜も〜ダメだ。大工さんに頼まないと」

このように**は"馬鹿力"なのである。生まれたときから異常に体力があり底無しだった。加えて大して鍛えてもないのに筋力が異常に発達して、引き締まってはいるが、その細く白い腕には想像も出来ないほど筋力があった。

彼女が所属していた忍者の里では、戦の合戦場で一人で一部の軍を壊滅させたという功績もあり、里では「闘牛女」と呼ばれ恐れられていた。

「はぁ、普通に暮らすって大変だわ。大分慣れては来たけど気を抜くとすぐこれだもんね」

こんな体質に**は忍者の里から恐れられ、「普通の女性」からどんどん離れていった。里ではほぼ兵器のような扱いで、異性も**を女扱いしない。しかし**は、体の発達こそ特殊だったものの健康な女性だ。恋もしたいしお洒落もしたい。里で活躍すればするほど、「普通の女性」から離れてくのだ。**はそれが苦痛になっていく。

里の忍者隊をやめるといっても誰も止めるものはいなかった。彼女のは一国を落とすには十分の忍術、そして力を持っておりそして我が身を案じて止めることが出来なかったのである。

そうして難なく忍者をやめ、「普通の女性」として生きていくことに決めた**はこのように農民として慎ましやかに過ごしているのであった。

「もういいや、明日直そ〜」

外れた戸を直すことを諦めて**は俵を倉庫のなかへ入れる。すべて入れ終えて一息ついていると家の方から大きな声が聞こえた。

「**!**はいるかーー!!」

山のてっぺんにまで届くような大きな声に**はあわてて家の前に戻るとそこには大柄の見知らぬ男が腕をくんで声を出していた。

「おかしいな。**はここにいると聞いたのだが」
「あ、あのぅ。**は私ですが・・・な、なにかご用ですか?」

**が恐る恐る男に話しかけるとぽかんとした顔で男は**を観察した。

「お前が**か?・・・なんだ普通の女の子じゃないか」

普通の女の子・・・と呼ばれて**は少し嬉しくなる。しかし男は笑顔で続けて言った。

「闘牛女と聞いていたので拍子抜けだ!」
「とと、闘牛女・・・」

それは里であらゆる場所で呼ばれていた通称である。**にとって消したい過去の話だ。なぜ知らない男がそんな**の通称を知っているのか。彼も忍者だろうか?そう思ってると男は変わらず満面の笑顔で名乗った。

「私は七松小平太という!城の雇われ忍者だ」
「その七松さんが何のようですか?私を始末しにきたんですか?」
「小平太でいいぞ!」

豪速球で質問を無視される。小平太はさっと握手を求めてきた。その大きな手を見て**は緊張して握手する。力加減を間違えないためだ。

「遠慮するな。私は見ての通りやわな身体はしていない。先ほどの質問だが、私は**を始末しに来たわけではないぞ」
「はぁ、でしたらなんのご用事ですか?」

小平太は**にぐいと近寄り肩を掴んだ。それを振り払おうとするが馬鹿力を持っている**でさえも振り払うことができない。ただ者ではないと**ははっと小平太を見上げた。

「お前をスカウトしに来たのだ」
「スカウト?なんの?」
「もちろん忍者だ」

忍者、ときいて**は顔をしかめ面せる。**は普通の女の子を目指して生活している。忍者などになればまた昔の生活に逆戻りだ。闘牛女といわれ、兵器として扱われるあの日々に。**は小平太の肩を本気の力で振り払う。手は離れて、**は彼を睨んだ。

「お断りします。私はもう忍ではありません」 
「そんなこというなよ。**。私とお前との仲ではないか」
「今!会った!ばかりですが!」
「まあ、細かいことは気にするな!」
Category : おにぎり根多帳
Tag :

prev / next