おにぎり噺


生存確認用。おにぎりの噺はしません



おにぎり根多帳

2019/06/05 12:33

記憶喪失系
六年成長団蔵
あなた=記憶喪失の女性

突然終わります
忍術学園で六年目の夏。団蔵はしばらくの休みの間、実家の加藤村に帰ってきていた。
そのなかで馬借業を営んでいる時期馬借の旦那になる加藤団蔵は星空の下にある馬小屋の藁の中に包まれてうずくまっていた。

「うーん、やっぱり馬小屋は落ち着くな〜」

昔から団蔵は眠れない夜はこうして黙って馬小屋に行き、山のようにつまれた藁の中に入っては夜を過ごしていた。そんな団蔵を、父親である飛蔵や同じ馬借にいる清八に見つけられては注意されていた。

「ん・・・なんだよ〜」

団蔵が呟くと起きていた子馬が団蔵の頬に鼻をくっつけた。こそばゆくて団蔵は身をよじる。こうして馬と共に夜を過ごすのが、団蔵は好きだった。

馬とじゃれてると馬小屋の外で微かな音がした。こんな夜更けに歩く者などいないだろう。きっと動物だろうと団蔵は思ったが、鉄の鉛のような、そして生ぐさい臭いが微かにして、黙って身体を起こした。

(血の臭い?まさか)

団蔵はそっと馬小屋を出て、外を見た。暗闇のなか、ひときわ黒い人影が見えて団蔵は身を強張らせた。何者だろうかと息を潜めていると、どさりとその人影は地面に崩れ落ちて、団蔵は驚く。

「大丈夫か!」

とっさに身体が動いて団蔵はその人影のそばへと駆け寄る。血の臭いはこの人物からするのを感じて団蔵はその人物を起こす。その柔らかな感触は女性だとすぐにわかった。力なくうなだれる相手を団蔵はかかえて急いで父の飛蔵のいる自宅へ、藁をくっつけながら走る。

「父ちゃん!人が、女の人が倒れてたんだ!」
「どうした団蔵・・・ってお前また馬小屋にいたのか」

「そんなことより、人が血だらけで倒れてたんだ!怪我してるかもしれない」

飛蔵は今から部屋の明かりを消そうとしている所だった。騒がしくやってきた息子の抱えている人の姿を見てぎょっとする。

「団蔵、その子は」

団蔵が抱えていた人物は年は団蔵よりも少し年上に見える。ボロボロの旅衣装を身にまとっていた。しかしその衣装は赤黒く染まっており、思わず声がでた。

「うっ、こりゃ大変だ。見せてみろ」

団蔵は血だらけの女性をそっと床に降ろす。どこかで出血をしてると思ったが傷らしい傷は見あたらず、
腰に脇差という小振りな刀を身に着けている。

「うぇぇ、この血、どうやら浴びたみたい。ちゃんと息もしてるし、怪我もしてないみたいだよ」

団蔵も女性の状態をみてそう言った。騒ぎを聞いて顔を出した同じく馬借で働く女性がやってくる。倒れた女性をみて驚き、すぐに着替えを持ってくると行って去っていった。

団蔵は持っていた手拭いで女性の顔を優しくぬぐった。浴びた血が手拭いに移るが、汚れのとれて彼女の表情が露になる。まるっこい顔の、目鼻立ちのくっきりした容姿に団蔵は場違いにも「かわいいな」と思った。

「身綺麗にしますんで貴方たちは出てって。あとは私たちが面倒見ますからおやすみになってくださいな」

飛蔵と団蔵、親子共々集まってきた女達に追い出され、お互い真夜中の夜空の下、顔を見合わす。居場所がなくなった飛蔵は息子に言った。

「・・・馬小屋でねるか」
「うん」


─翌日の早朝、加藤村の馬借はちょっとした騒ぎになっていた。馬小屋でぐっすり眠った団蔵が家に戻ると、女性が数人集まっている。団蔵が挨拶すると、彼女達は目線を移動させる。団蔵もその視線の先をみると、小袖姿で色白な見知らぬ女性が礼儀正しく座っていた。

「どうしたんだ?」
「あぁ!若旦那様。この子、昨日の夜に来た女の子なんですが」
「え?あの子?」

団蔵は驚いてもう一度その女の子を見る。昨日は彼女は袴姿。さらに汚れた身体をしていたので見違えたのだ。今のかわいらしい姿に団蔵は見とれてしまう。団蔵は女性達の中に入り込み、彼女の前に現れた。

「や、俺は団蔵。君、昨日のこと覚えてるか?」
「昨日・・・すみません・・・覚えてなくて」

ぼんやりと答える女性。団蔵は少し違和感を感じたが、続けて質問してみた。

「ここは加藤村なんだけど、何処から来たんだ?名前は?」

すると彼女は固まった。難しい質問はしていないのだが・・・。それでも黙って待っていると悲しそうな顔で答えた。

「わ、わからないんです」
「え?何が?」
「自分の名前も、何処から来たのかも、わからないんです」

その答えに団蔵は絶句した。彼女は冗談をいってるように聞こえず、悲しそうな顔を団蔵に向け続けている。

「じゃあ・・・君は過去や自分の記憶がない、ってわけ!?」

辺りがざわつく。団蔵もどうしていいかわからず、困っていた。
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